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植物培養細胞を用いた高精度な低線量放射線生物影響モニタリング手法の開発(平成 30年度)
Refinement of a method to detect biological effects from low dose radiation using plant cultured cells

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1820CD008
開始/終了年度
2018~2020年
キーワード(日本語)
環境放射線,DNA損傷,相同組換え修復,放射線影響
キーワード(英語)
Environmental radiation,DNA lesion,Homologous recombination repair,Effects from radiation

研究概要

本研究は、野外の放射性物質汚染による生物影響を評価するため、迅速かつ実用的な環境放射線による生物影響をモニタリングするための新規技術開発を行う事を目的とする。福島県内の被災地域において、放射性物質による環境汚染はその汚染の現状は明らかになりつつあるが、野生生物への影響については未だに不明である。放射線による生物影響はDNAの損傷がその発端となる。これにより突然変異が誘発され、変異の場所によっては表現型として現れる。一方で、生物はこのようなDNAの損傷を修復するための機構を備える。申請者らは「モニタリング遺伝子」によるDNA損傷・修復頻度を検出する事ができる植物を開発した。しかしながら、本植物は他の環境ストレスによるDNA損傷も同時に検出するため放射線による正確なDNA損傷の評価に使用するのは困難である。そこで本研究ではこのモニタリング遺伝子を持つ植物より培養細胞を確立する。これを用いて放射線量変化に対する感度を検証するとともに、野外における培養細胞の培養試験・DNA損傷検出手法の確立を通して、福島県内における放射線量が生物影響を引き起こすレベルであるかどうかについて検証を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

2018年度:非破壊でDNA損傷を評価できるレポーター遺伝子LU-UCを導入した植物及び培養細胞を確立し、これらを用いた室内実験による性能評価試験を行う。また、GU-USを導入した培養細胞を用いた福島県高線量地域におけるDNA損傷頻度の評価を行う。

2019年度:LU-UCを導入した培養細胞を用いて福島県高線量地域におけるDNA損傷頻度の評価を行う。また、LU-USを用いたDNA損傷の検出頻度とゲノムDNAへのDNA変異の蓄積との関係性について明らかにする。

2020年度:LU-UCを導入した培養細胞を用いた福島県高線量地域におけるDNA損傷頻度の評価を継続する。また、2019年度に引き続きLU-USを導入した植物においてゲノムDNAの解読を進め、内生の相同組換えマーカーを探索する。

今年度の研究概要

2018年度は放射線モニタリングに用いるLU-UC導入シロイヌナズナカルスの作成・性能評価を行う。具体的には、LU-UC遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物 (LUUC植物)を作成し、この植物からカルスを誘導する。これに放射性物質により汚染された土壌による曝露を行い、相同組み換え頻度を定量し性能評価を行う。また、先行開発されているGU-US導入培養細胞を用いて高線量区域での放射線影響評価を行う。これまでに毎時5.6μSvまでの地点での評価は終わっているので、2018年度はこれ以上の線量率を示す場所での試験を行う。

外部との連携

(研究代表者)筑波大学 高橋真哉 助教

課題代表者

玉置 雅紀

  • 生物多様性領域
    環境ストレス機構研究室
  • 室長(研究)
  • 博士(農学)
  • 生物学,農学,生物工学
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