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西シベリア雪氷圏におけるタワー観測ネットワークを用いた温室効果ガス収支の長期変動解析(平成 29年度)
Analysis of long-term variation in green house gases using a tower network in West Siberia

予算区分
BB 環境-地球一括
研究課題コード
1721BB002
開始/終了年度
2017~2021年
キーワード(日本語)
二酸化炭素,メタン,西シベリア,タワーネットワーク
キーワード(英語)
carbon dioxide,methane,West Siberia,tower network

研究概要

ロシア共和国のシベリア域は、地球温暖化に伴い永久凍土の融解やタイガ植生の遷移が起こるなど、気候変動に対して脆弱な雪氷圏であり、グローバルな温室効果ガスの循環ならびにその将来予測にとって重要な放出源・吸収源が分布している。しかしシベリア域における温室効果ガスの観測網は、国立環境研究所とロシア科学アカデミーの大気光学研究所及び微生物研究所が共同で運用してきたタワー観測ネットワーク(JR-STATION: Japan-Russia Siberian Tall Tower Inland Observation Network)がほぼ唯一である。本研究ではこのJR-STATIONを用いて温室効果ガス(CO2、CH4)濃度の詳細な空間分布と10年規模の長期変動を捉えることが第一の目的である。特にCH4濃度は2007年から全球規模での再増加が報告されているが、西シベリアの世界最大の湿地帯からのCH4放出量の変化がその増加に大きく寄与するという報告もあり、現地での長期変動をモニタリングすることが強く求められている。さらに観測濃度の時空間変動からインバース解析を用いてシベリア域の多様な地表面(タイガ、ステップ域、湿地帯)からのフラックス分布を推定しその不確実性を小さくするとともに濃度増加との因果関係やそれぞれの放出源・吸収源の寄与を明らかにすることが第二の目的である。得られたデータは国立環境研究所独自のデータベースを構築し、迅速なデータ公開を行うことによって国内外の研究者への利用を促進する。

研究の性格

  • 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

初年度からJR-STATIONを利用してCO2およびCH4濃度の連続観測を継続して行う。シベリアタイガでは森林火災の発生することがあるが、それが観測サイトの近くである場合はCOのシグナルが強く出ることが予想される。CO、CO2、CH4の濃度変動を総合的に解釈することにより、その森林火災の特徴を捉え、インバースモデルによるCO2、CH4放出量推定の向上を行う。
数年にわたる観測で、長期的なCO2濃度とCH4濃度の時系列データが得られてから、それをインバースモデルに入力してCO2吸収・放出量およびCH4放出量の分布推定を行う。全球の長期的フラックス変動推定を考慮しつつ、西シベリアの地域的CO2・CH4フラックス変動の特徴を捉える。観測データとしては、タワー観測ネットワークによる高頻度観測の結果に加えて、国立環境研究所地球環境研究センターのモニタリング事業で継続しているシベリア上空の3ヶ所での航空機を使った定期サンプリングによるCO2とCH4観測値を使用する。シベリアの多様な地表面(タイガ・ステップ・湿地帯)におけるCO2放出・吸収量およびCH4放出量の年々変動を明らかにすると共にその気候変動との関係を探る。
タワー観測で得られた温室効果ガスの観測値は全球の観測網の空白域を埋める貴重なデータであるので、検証が済み、一定の解析を終えたデータは速やかにデータベースに格納し、外部に発信することで、データ利用の促進を図る。

今年度の研究概要

JR-STATIONを利用してCO2およびCH4濃度の連続観測を継続して行う。CO2測定に関しては非分散型赤外分光計、CH4測定に関してはSnO2半導体CH4センサーを用いて測定を行う。また3箇所の観測サイト(KRS, DEM, NOY)においてはキャビィティリングダウン分光分析装置によってCO2およびCH4濃度の連続測定を行う。

外部との連携

ロシア科学アカデミー大気光学研究所

課題代表者

笹川 基樹

  • 地球システム領域
    大気・海洋モニタリング推進室
  • 主幹研究員
  • 理学博士
  • 理学 ,化学
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担当者