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フィルン試料のハロカーボン測定を利用した過去50年のメタン同位体変動の高精度復元(平成 29年度)
Reconstruction of atmospheric variations of methane isotopes over the last 50 years using measurements of halocarbons in firn air samples

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1719CD017
開始/終了年度
2017~2019年
キーワード(日本語)
メタン,同位体,フィルン,ハロカーボン
キーワード(英語)
Methane,Isotope,Firn,Halocarbon

研究概要

重要な温室効果ガスであるメタン(CH4)の全球循環の解明は、その気候への影響やフィードバックの理解と将来予測にとって重要である。過去の変動の復元と要因理解はその重要な手がかりとなるが、現在の諸仮説の検証には観測的証拠が不足している。本研究の目的は、極域氷床上部の空隙層(フィルン)の空気試料から分析したCH4同位体比データから、南北両半球でのCH4放出源の時間変化を過去50年にわたって復元することである。これに不可欠なフィルン空気拡散モデ ルの高度化のため、フィルン空気試料のハロカーボン測定を行う。これにより、南北両極域でのCH4同位体比の時間変化を世界で初めて同時に復元し、CH4濃度の変動要因の解明に迫る。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

過去50年にわたるCH4濃度の要因解明に取り組む本研究では、第一に、フィルン空気試料用に最適化した改良型のハロカーボン測定システムを構築し、南極およびグリーンランドで採集されたフィルン空気試料の分析を実施する。第二に、フィルン空気拡散モデルを改良して、得られたハロカーボンデータを導入し、複数のハロカーボン類を用いて拡散係数の深度分布を最適化する。この拡散係数に基づいてCH4同位体比の時間変化を復元する。第三に、異なるCH4放出源の寄与を定量的に評価するため、ボックスモデル計算を行って、過去50年のCH4放出源の時間発展について考察する。

今年度の研究概要

フィルン空気試料の測定とフィルン空気拡散モデルの改良を重点的に実施する。
(1)改良型のハロカーボン測定システムの構築とフィルン空気試料の測定
希少なフィルン空気試料の測定に必要な試料量を削減するため、現行のハロカーボン測定システムに真空系濃縮ラインを増設する。この際、試料測定を効率的に実施するため、可能な仮の自動化を施す。十分な私見測定を実施することで、多様なハロカーボン類(CFC-11, CFC-12, CFC-113, SF6, CH3CCl3など)を測定対象として濃縮トラップの充填材・温度・処理時間などの最適化を行って、測定精度を評価する。また、ハロカーボン濃度の定量に用いる標準ガスを用意し、事前の検量を実施する。これらの後、南極(Dome Fuji/YM85)及びグリーンランド(NGRIP)で採集されたフィルン空気試料(各30本程度)の分析を開始する。
(2)フィルン空気拡散モデルの改良・性能評価
本研究で用いるフィルン空気拡散モデルは、これまでに研究対象となった主要な温室効果ガス(CO2/CH4/N2Oやその同位体)に用いられてきた。このため、本研究ではハロカーボン類のモデリングに追加で必要となる入力パラメータや成分別の大気ヒストリを検討し、試験的な計算で動作確認を行う。続いて、先行研究によりフィルンの公開データを用いてモデル性能を評価し、他の研究グループのモデルとの比較によって、モデルの特性把握と修正点の検討を行う。

外部との連携

宮城教育大学、国立極地研究所、東北大学、海洋研究開発機構

関連する研究課題

課題代表者

梅澤 拓

  • 地球システム領域
  • 主任研究員
  • 博士(理学)
  • 理学 ,地学,物理学
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