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景観遺伝学に基づく草地性昆虫類の生息地ネットワーク評価とその体系的保全研究(平成 29年度)
Conservation study of grassland: evaluating habitat networks of insects with landscape genetics.

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1517CD013
開始/終了年度
2015~2017年
キーワード(日本語)
景観遺伝学,昆虫,生息地ネットワーク,次世代シーケンサー
キーワード(英語)
landscape genetics, insects, habitat network, next generation sequencing

研究概要

我が国の二次草地は、さまざまな希少生物の生息地であるが、近年、質の劣化や生息地の連結
性の低下により危機に曝されている。本研究では、景観遺伝学の最新手法を駆使し、分断景観下
に住む草地性昆虫類を長期にわたって保全するための具体的な方策を探る。千葉県北部の下総台
地に点在する二次草地群30 カ所ほどを対象に、分散能力の異なる複数種の昆虫を扱う。各種につ
いて、マイクロサテライト遺伝子の多型を解析する。生息地間の遺伝的距離を説明する最適な景
観の抵抗性(移動のしにくさ)を、生息地の質も同時に考慮した統計モデルとサーキット理論を
用いて推定する。また、過去の土地利用の変遷から、土地利用の将来予測を行い、優先的に保全
すべき生息地や再生適地を、景観スケールでの遺伝子流動への貢献度等から推定する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

千葉県北部に点在する二次草地30 カ所を調査対象地とする。草地に依存する昆虫類として、ジャノメチョウ、クルマバッタ、クツワムシなどの個体数調査と草地内外の環境調査を行う。各種について
DNA 解析用に標本を採集すると同時に、各種につき15 遺伝子座のマーカーの開発を目指す。マーカーが開発できたら、(1) 生息地間の遺伝的距離の算出、(2)有効集団サイズの推定、(3)サーキットモデルを用いた生息地間の抵抗距離(resistancedistance)の推定を行い、さらに(4)行列重回帰モデルを用いた最適化アルゴリズムを組み合わせることで、景観要素の抵抗値と生息地の質の違い同時に考慮した遺伝子流動の予測モデルを作る。また過去の土地利用の変遷から、土地利用タイプごとに推移確率を推定し、セルオートマトンモデルを用いて、将来予測を行う。最終的には、得られた結果をもとに、生息地の保全優先度や再生指針を提言する。

今年度の研究概要

2016年に採集したバッタ類についてSNP座を探索し、草地間の遺伝的構造を解析する。また、得られた遺伝的情報をもとに、有効集団サイズの推定やサーキットモデルを用いた遺伝子流動について明らかにする。

外部との連携

本研究の研究代表者は、東京大学大学院農学生命科学研究科の宮下直教授であり、分担者として参画する。東邦大学理学部の長谷川雅美教授も分担者であり、共同研究を行う。

課題代表者

今藤 夏子

  • 生物多様性領域
    環境ゲノム研究推進室
  • 室長(研究)
  • 博士(学術)
  • 生物学
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