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多様なステークホルダーの活動・原動力に根ざしたアジアの消費・生産パターンの転換方策(平成 28年度)
Transition Measures of Asian Consumption and Production Patterns Based on Activities and Dynamics of Diverse Stakeholders

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) S-16-2
研究課題コード
1620BA004
開始/終了年度
2016~2020年
キーワード(日本語)
持続可能な消費と生産,持続可能なライフスタイル,持続可能な経営,持続可能な開発目標
キーワード(英語)
sustainable consumption and production, sustainable lifestyle, sustainable business, Sustainable Development Goals (SDGs)

研究概要

 国連では持続可能な開発目標(SDGs)が合意され、その中では持続可能な消費・生産(SCP)パターンへの転換と定着が目標の1つになっている。しかしながら、SCPパターンへの転換を促す施策において、多様なステークホルダーによって社会全体を変革する施策の提示及び実践は限定的である。今後は、いかなる消費と生産の構造を構築するのかという点に目を向けた施策の検討が必要である。そのためには、生産側の効率性アプローチに加え、消費側の充足性アプローチも求められる。一方で、アジア地域では、先進国、新興国、開発途上国が混在しており、求められる施策は各国の特性によって異なる。先進国では、モデルケースとなる消費と生産の構造を構築することが求められ、新興国や開発途上国では、エネルギー・資源利用効率の向上を通じて公正で公平な循環型・低炭素型社会を構築することが求められる。このような背景のもと、アジア地域を対象に各国の行政実施能力や気候・経済・生活習慣等の特性に即したSDGsを具体的なものとした上で、特性に適合した方策を設計し、その効果を評価することにより、実効性のある形でのSCPへの転換・定着の推進に寄与する研究開発が必要である。
 本課題では、上記認識のもと、ステークホルダーに着目した研究を担当する。「生活者」や「企業」「自治体」「コミュニティ」等を経済主体以上の役割を果たすものとしてアジアの文脈のなかで捉え、生活者の活動・ライフスタイル、企業が利潤確保と責任ある社会構成員であることを調整・融和させる企業活動、地域での新たな生産と消費の形態を創出する活動などを多角的に把握する。得られた知見をふまえて、アジアの各ステークホルダーがどのような将来を実現しようとしているかという活動・原動力に着目し、アジアの新たな発展パターンの方向性と生産・消費形態を効果的に転換する方策を提示する。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

 アジアにおけるSCPのステークホルダーとして、先進国、新興国、開発途上国における多様な生活者(生活者一般、また若者など将来世代を形成していく主役となるもの)や中間層と呼ばれる消費を牽引していくと考えられる層や、大企業、中小企業、自営業者、株主、投資家、サプライヤー、自治体、各種コミュニティなどを想定したうえで、生活者と企業を基軸に以下の研究を実施する。
 サブテーマ(1)では、多様な生活者に着目して、アジアにおけるライフスタイルの現状とその変化の潮流、ならびライフスタイルの類型を把握して提示することを目標とする。また、家庭内電力消費機器を対象とした製品モデルにより、対象国の製品の利用・廃棄等に伴う環境負荷量を算出・分析し、製品技術開発上の目標や政策ターゲットを提示する。
 サブテーマ(2)では、企業を中心にサプライヤーや株主等も射程に入れ、企業の従来的な生産者、社会的な価値・ニーズを創出する生産者、消費者という3つの側面に着目し、アジアでの先進的環境経営モデルとその導入策を提示することを目標とする。
 それぞれで得られた知見をもとに、SCPへの転換方策についての中間成果を3年目にとりまとめる。その内容をふまえて、精査した調査・研究を実施し、5年目に最終とりまとめを行う。

今年度の研究概要

 サブテーマ(1)では、東南アジア地域の新興国(タイなど)および途上国(カンボジアなど)におけるライフスタイル調査を実施する。調査にあたっては、他のテーマとも共通する地域を選定する。また、若者を対象としたライフスタイルの調査については予備調査を実施しながら体制を整える。インフラ普及とライフスタイルに関する研究については、日本とEUの比較分析をインペリアルカレッジおよびウェストミンスター大(英国)と共同で実施する。家庭内電力消費機器としてエアコンなどを対象に、製品ストック・モデルの構築とパラメータの調査・推計などの検討を行う。アジアにおけるコミュニティの既存研究などをふまえて、コミュニティの類型と生産・消費パターンとの関係を整理する。
 サブテーマ(2)では、アジアにおける企業の環境経営モデルの展開をステークホルダーによる導入新方策を研究するために、先進国モデルとしてイギリス、ドイツ、日本の環境経営の動向を比較調査し、アジア諸国への導入可能性を探求する。新興国としてタイおよび途上国としてベトナムを取り上げ、環境経営およびサプライチェーン単位の環境マネジメント手法の現状について調査を実施し、研究フレームワークを確立する。また、アジア地域への環境技術開発の状況を定量化するために特許データベースを構築し、環境技術導入モデル企業を欧州およびアジアで探索する。

外部との連携

環境省環境研究総合推進費 戦略研究プロジェクトS-16「アジア地域における持続可能な消費・生産パターン定着のための政策デザインと評価」(代表 東京大学平尾雅彦教授)の4つのテーマの一つである。2つのサブテーマから構成され、サブテーマ(1)を国立環境研究所、サブテーマ(2)が神戸大学(代表 國部克彦教授)が担当する。サブテーマ(1)では、英国・ウェストミンスター大ならびにタイ・メイファールアン大と共同研究を行っている。

課題代表者

田崎 智宏

  • 資源循環領域
    資源循環社会システム研究室
  • 室長(研究)
  • 博士 (学術)
  • システム工学,政策学,工学
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担当者