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前骨髄性白血病タンパク質のSUMO化を指標としたヒ素の毒性作用機序の解明(平成 28年度)
A mechanistic approach of arsenic toxicity using SUMOylation of Promyelocytic Leukemia protein as an indicator.

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1616CD001
開始/終了年度
2016~2016年
キーワード(日本語)
ヒ素,白血球
キーワード(英語)
arsenic, leukocyte

研究概要

環境発癌物質である三価のヒ素(亜ヒ酸)は、急性前骨髄性白血病(Acute Promyelocytic Leukemia, APL)に対して画期的な治癒効果をもつことが報告されている。発癌性と癌治癒性という一見相反する効果は、ヒ素化合物がタンパク質のシステイン残基などのチオール化合物と反応することに由来していると考えられている。 本研究では、前骨髄性白血病タンパクであるPromyelocytic Leukemia (PML) がシステイン高密度に存在する特殊な配列を持っていることに焦点を当て、ヒ素とタンパク質のシステイン残基との反応性との影響を明らかにすることにより、環境毒性学とヒ素化合物の癌治療への応用の両面よりヒト健康問題に資することを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

PML遺伝子導入細胞よりタンパクを抽出・精製し、ヒ素や他の半金属元素とのRINGフィンガードメインとの反応性の解析に主眼をおく。ヒ素結合カラム、あるいはタグ抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを行い、PMLタンパク質を精製し、ヒ素がPMLタンパク質に結合したときの構造変化について解析の準備を行う。PMLはN端にRBCC/TRIMモチーフを持つが、RBCCに含まれるRINGフィンガードメインの高密度システイン配列がヒ素の結合に関与していることが想定されるため、RINGフィンガードメインの変異株も含めた解析を行う予定である。PMLタンパク質の質的変化は、C端の配列、特にSIM(SUMO Interacting Motif)にも依存するものと考えられ、また、そのことがPMLのtranscript variants が様々な生理活性を有している原因であると考えられることから、変異株をはじめとして様々なtranscript variantsを遺伝子導入した細胞についても、ウエスタンブロッティング法、プルダウン法、蛍光免疫染色法を駆使して、PMLのSUMO化をはじめとしたタンパク質の質的変化について詳細に調べる。さらに、最終年度では急性前骨髄性白血病患者の白血球から樹立された細胞、あるいは慢性骨髄性白血病患者の白血球由来であるK564などを用いて、実際の白血病由来の細胞において、PMLあるいはPML-RARAに対するヒ素の結合能を調べ、白血球におけるPMLタンパク質の質的変化についても調べる。ヒ素、あるいはアンチモンなどの半金属元素に対する細胞の感受性要因の解析も行い、ヒ素を含めたこれら半金属元素の生体作用機序について明らかにする。

今年度の研究概要

7種類の存在が知られているヒトPML遺伝子、およびヒ素結合部位と推測される領域に変異を導入した遺伝子をほ乳類細胞に導入し、亜ヒ酸の曝露に伴うPMLのタンパク修飾と、細胞内におけるPMLの局在変化を調べる。 タグ抗体を固定化したカラムを用いて、PMLをトランスフェクトした細胞より抽出したPMLを抽出・精製し、PMLに結合する亜ヒ酸をICP-MSを用いて定量する。PMLとヒ素との結合形態、タンパク修飾、PML核小体にリクルートされるタンパク質の解析はウェスタンブロティング法やプルダウン法を用いて調べる。 他の半金属元素とRINGフィンガードメインとの反応性も参考にして、毒性作用と癌治療への応用の両サイドから、白血病細胞における亜ヒ酸の生体影響を明らかにする。

課題代表者

平野 靖史郎