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過去の大気浮遊粒子曝露が現在の肺がん発症等の健康リスクに及ぼす影響の評価(平成 26年度)
Pulmonary carcinogenic risk assessment of past exposure of suspended particulate matter in ambient air

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1315CD016
開始/終了年度
2013~2015年
キーワード(日本語)
大気汚染物質,環境変異原物質,リスク評価,突然変異,in vivoアッセイ
キーワード(英語)
air pollutant, environmental mutagen, risk assessment, mutation, in vivo assay

研究概要

都市大気の浮遊粒子には、ディーゼルエンジン排気等の化石燃料の燃焼により生成するベンゾ[a]ピレンをはじめ多種多様な多環芳香族炭化水素(PAH)やその誘導体が存在する。これらの化合物の一部は強い変異原性を示し、都市域での肺がんの原因の一つと考えられており、また次世代への影響が懸念されている。しかし、現時点における肺がんの発症は、過去数10年にわたる変異原物質曝露の累積効果によるものである。 本研究では、都市大気中の浮遊粒子から被る健康リスクを定量的に評価するために、浮遊粒子の抽出物が体内で示す変異原性(in vivo mutagenicity)や、そこに含まれる変異原物質の濃度の経年変化を明らかにする。これにより、過去の変異原物質の曝露が現在の肺がん発症や次世代影響などのリスクにどの程度寄与しているかを評価する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

都市大気中に存在する浮遊粒子成分の曝露の肺がん発症や次世代影響のリスクを、過去からの累積影響を考慮して評価するのに必要な知見を得る。第一に混合物全体アプローチとして、gpt deltaマウスを用いたin vivoアッセイ系等を用いて、東京都内で毎年採取されてきた浮遊粒子の抽出物が肺中で示す生体内変異原性を評価するとともに、突然変異スペクトルを解析し、これらの経年変化を明らかにする。また、浮遊粒子抽出物の投与が精子の遺伝的不安定性に及ぼす影響の経年変化を解析する。第二に組成物アプローチとして、浮遊粒子中の変異原物質/発がん物質(PAH、ニトロ化PAH、多環芳香族キノン等)の大気中濃度の経年変化を解析する。これらの知見を基に、肺がん発症や次世代影響などのリスクレベルの経年変化を明らかにし、さらに、過去の累積影響を考慮すると、現時点と比べてリスクレベルがどの程度高く推定されるかを明らかにする。

今年度の研究概要

 昨年度に引き続き、東京都内の定点で1980年から2010年の間に大気から回収した浮遊粒子の内、1980年次、2010年次、及びその間の3年次分の5試料からジクロロメタンにより可溶性の炭化水素を抽出する。In vivo mutation検出用遺伝子導入動物gpt deltaマウスの肺中へ、界面活性剤に溶解した浮遊粒子抽出物などの試料溶液を気管内投与する。投与後、突然変異が発現する期間(2週間)飼育した後、肺のほか肝臓・腎臓・精巣等の突然変異が発生する可能性のある臓器を採取し、高分子状態でゲノムDNAを抽出する。gpt遺伝子を大腸菌に回収し、6-TG耐性コロニーの発生頻度と変異体のDNA配列から、試料の生体内変異原性や突然変異ホットスポットおよびDNA修復に関与する遺伝子の発現量の経年変化を求める。

外部との連携

国立医薬品食品衛生研究所との共同研究

関連する研究課題

課題代表者

青木 康展

担当者