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廃棄物の焼却・熱処理システム評価およびモデル解析に関する研究(平成 25年度)
Study on thermal disposal system for solid wastes and modeling analysis

予算区分
AQ センター調査研究
研究課題コード
1115AQ020
開始/終了年度
2011~2015年
キーワード(日本語)
焼却施設,低炭素社会,指標,ガス化,改質,触媒,エネルギー回収,平衡計算,重金属
キーワード(英語)
INCINERATION FACILITY, LOW CARBON SOCIETY, INDEX, GASIFICATION, REFORMING, CATALYST, ENERGY RECOVERY, EQUILIBRIUM CALCULATION, HEAVY METALS

研究概要

焼却処理技術はわが国の基本的な廃棄物減量・安定化技術として確立されてきた経緯がある。近年は熱回収施設と位置づけられ、エネルギー回収による温暖化防止さらには低炭素社会への転換に寄与することが求められる。このためには、焼却処理施設を低炭素社会適合への尺度を用いて適正に評価し、処理システムに関しその構成面から必要な転換を促す政策誘導とその学術的なバックアップが必要である。本研究では、このような趣旨に沿って、従来型の焼却処理を新たな中間処理システムに向けて現実的に変革するための技術的・社会経済的要件を明らかにする。すなわち、中間処理システムに求められる新たな評価指標を開発または再編成し、複数の技術の統合システム化などを要素とする社会経済システムにおける持続可能な成立条件などを提示する。
 欧米の重金属規制、災害廃棄物処理、水俣条約政府間交渉(UNEP重金属PG)等、熱処理における重金属の挙動やその制御性に関する知見が必要になるため、マルチゾーン平衡計算を既存の都市ごみの焼却施設やガス化溶融施設等の実施設へ適用し、重金属等の挙動を再現可能なシミュレータを開発する。また、他の流体モデル等と融合させてシミュレータの高度化および挙動制御法の提案を行う。加えて、対象物を廃棄系バイオマスや災害廃棄物へ拡張し同様な検討を実施する。マルチゾーン平衡計算を既存の都市ごみの焼却施設やガス化溶融施設等の実施設へ適用し、重金属等の挙動を再現可能なシミュレータを開発するとともに、他の流体モデルと融合させてシミュレータの高度化を行う。加えて、対象物を廃棄系バイオマスへ拡張し、バイオマス専焼・混焼もしくは混合処理・資源化を再現できるシミュレータとする。
 焼却をはじめとする熱的な処理施設は、廃棄物の適正処理と資源・エネルギーの循環利用を両立させ促進すべき役割を担っている。しかし、従来型の焼却処理は、技術の本質的な限界に加え、地域における立地、施設の整備に関する制約などから上記循環利用に関する性能に限界があることから、一層の性能向上とさらには低炭素社会実現への現実的な進め方を定める必要がある。そこで、循環的な利用に係る性能を発揮できる技術およびシステムであって、従来技術からの現実的な変革のための道筋を示すことによって、持続的な低炭素社会の実現に寄与することを目的とする。
 欧米の重金属規制、災害廃棄物処理、水俣条約政府間交渉(UNEP重金属PG)等、今後熱処理における重金属の挙動やその制御性に関する知見が必要になると予想され、熱処理施設内の挙動を再現できる高度なシミュレータが必要となる。開発されるシミュレータを用いて排出される重金属の形態予測や排出低減化法の提案を目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

廃棄物の適正処理と資源循環を進める焼却等の処理施設が、真にわが国の廃棄物処理とこの分野での低炭素化促進のために必要な性能を発揮する方向へ転換すること、一方で既存の処理技術を超えるエネルギー回収効果を発揮できる技術と設備を社会に示すことで持続的な低炭素社会の実現を支える技術を創る。この目的のために2通りの研究を実施する。

1.低炭素社会を実現する廃棄物中間処理システムの社会実装デザイン
実際の焼却施設ほかに関する運転データおよび残さの利用などにわたる従来の調査・解析によって得られたエネルギー回収能や残さ排出などに指標をレビューしまたは改良をはかる。これによって、焼却施設の処理に関する性能特性を定量的に評価可能な基準を提示する。一方、近年、地方において小規模的にシステムの導入例がみられるバイオガス化と焼却処理の組み合わせなど、複数にわたる技術の統合によるシステム化に関し、技術的な処理性能、施設の経済性評価および施設の導入に至る意思決定の解析など、社会経済システム的な観点からの成立条件の解析を通じて持続可能な処理システムの成立要件を抽出・提示する。

2.熱処理シミュレータの開発および熱処理施設内の挙動解析と制御
都市ごみや災害廃棄物等を熱処理する施設における重金属の挙動およびフローを施設調査の解析によって明らかにするとともに、ラボ実験により重金属の揮発挙動を解析する。また、それらの挙動を再現するための平衡計算の適用を行い、最終的には熱処理施設全体を再現できるマルチゾーン平衡計算(シミュレータ)を開発する。調査・実験結果を用いてシミュレータの精緻化を行いつつ、挙動制御のための操作条件も提案する。また、他のモデル等と融合させ、シミュレータの高度化も適宜検討する。

今年度の研究概要

サブテーマ1:低炭素社会を実現する廃棄物中間処理システムの社会実装デザイン、においては、実際の焼却施設ほかに関する運転データおよび残さの利用などにわたる従来の調査・解析によって得られたエネルギー回収能や残さ排出などに関する指標をレビューし、実用化のための改良をはかる。これによって、焼却施設の処理に関する性能特性を定量的に評価可能なスタンダードを提示する。一方、近年、地方において小規模的にシステムの導入例がみられるバイオガス化と焼却処理の組み合わせなど、複数にわたる技術の統合によるシステム化に関し、技術的な処理性能、施設の経済性評価および施設の導入に至る意思決定の解析など、社会経済システム的な観点からの成立条件の解析を通じて持続可能な処理システムの成立要件を抽出・提示する。

サブテーマ2:熱処理シミュレータの開発および熱処理施設内の挙動解析と制御
焼却施設の焼却灰や飛灰の重金属組成を明らかにして焼却炉内の重金属フローを整理しつつ、平衡計算をアルカリ金属から重金属へ拡張する。また、ラボ実験により灰からの重金属の揮発挙動を調査するとともに、計算結果をフローの結果およびラボ実験結果と比較することにより、計算結果の妥当性を評価し、現実の挙動を再現するように計算法の改良を検討する。また一方、焼却対象を災害廃棄物へ拡張することにも着手する。

外部との連携

共同研究機関:埼玉県環境科学国際センター

課題代表者

川本 克也

担当者