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DNAバーコーディングを適用したユスリカ科昆虫の水質指標性と多様性の研究(平成 24年度)
Diversity and water quality index of insects of the family Chironomidae investigated with DNA barcodding

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1215CD005
開始/終了年度
2012~2015年
キーワード(日本語)
ユスリカ,DNAバーコーディング,生物多様性,水質指標性
キーワード(英語)
chironomid, DNA barcoding, biodiversity, water quality index

研究概要

湖沼・河川・ため池に生息するユスリカ科昆虫の群集組成を明らかにし、その組成と環境要因等との関係解析からユスリカの水質指標あるいは生物多様性要素としての特性評価を行い、淡水域の生物多様性・生態系の保全に役立てる。そのために、特に水生の幼虫およびメス成虫について困難のある種同定に対してDNAバーコーディングを適用することにより、種間の遺伝的差異をも基礎とした同定基準を新たに整備するとともに、分類学的混乱の整理を進める。その基準を群集組成解析に利用して、湖沼・河川においては水質汚濁・富栄養化の程度との関係解析により、水質指標性の検討を行い、ため池においては環境要因およびユスリカ以外の生物群の多様性との関係解析により、ユスリカを含んだため池生物多様性の決定要因を明らかにする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

ユスリカ幼虫標本を、水質生物指標検討においては、湖沼(中部地方)・河川(中国地方)における、時期あるいは場所による水質変化に対応した形で採集する(遺伝分析可能なら過去の標本も利用)。止水域の多様性評価においては、兵庫県南部において(独)国立環境研究所等による生物多様性・環境調査の行われてきたため池群から採集する。オス成虫標本も平行して定性採集する。同一標本に対して形態測定とDNA抽出の両方を行い、形態と遺伝子による種同定を対応させ、種同定基準の整備に供する。同定によって得られたユスリカ群集組成を、水質生物指標検討においては水質要因との相関関係を解析することによって、生物多様性評価においては、他生物群の多様性および環境要因との関係を多変量解析等で統計解析することによって、指標性および生物多様性決定要因の解析・抽出を行う。
 初年度は定期的調査池選定と調査池環境調査および主要種のDNA情報集積に重点を置き、次年度以降は調査池における定期観測と水質指標性・多様性解析ならびにユスリカ科昆虫主要種の種同定基準整備を行う。

今年度の研究概要

(1)標本採集場所の設定
水質指標性評価では湖沼の採集地点(5地点前後)を中部地方の複数湖沼から選定する。河川採集地点を中国地方河川から選定する(5地点前後)。多様性評価では兵庫県南部のため池群から池10面前後を選定する。
(2)標本採集時期
ユスリカ幼虫の生息量が安定している冬季および水草が生長しユスリカの生息基質が増える初夏に重点的な採集を行う。また、羽化成虫採集対象種に応じて適宜設定する。
(3)環境要因測定
水質は、COD・全リン濃度・全窒素濃度・クロロフィル濃度等の項目を参照する。ため池については、水草・魚・プランクトンなどの生物相と周囲の土地利用も参照する。
(4)ユスリカ種の形態・遺伝子による同定
DNAバーコードの収集は、昆虫類の標準的なDNAバーコード遺伝子であるミトコンドリアCOI(チトクローム・オキシダーゼ?)遺伝子を主として用いる。決定された塩基配列は、形態により種同定された成虫の場合を種同定基準に加える。未同定成虫および幼虫は同定基準と照合し、種名を得る。種名が決定できない場合は、国立遺伝学研究所の日本DNAデータバンク(DDBJ: www.ddbj.nig.ac.jp)、およびBarcode of Life Data Systems (BOLD: www.boldsystems.org)の既存データベースよりCOI遺伝子の塩基配列を入手し、系統解析により近縁な既知種を判別する。このように形態およびDNAバーコードによって同定した結果を集計して採集地点ごとのユスリカ群集組成をまとめる。なお、国内に限らず国外からも記録されている種について標本比較を行うために、ドイツ・ロシア等の研究者から標本を入手する予定である。
(5)ユスリカ群集組成を用いた水質生物指標再検討、生物多様性評価
1地点1採集100個体の標本が得られると仮定すると、初年度中にそれらの塩基配列決定から群集組成資料完成にまで進むことは難しい。ただし、形態同定が可能なオス成虫については群集組成と環境要因との解析を予備的に進める。

外部との連携

信州大学 平林公男教授
広島大学 河合幸一郎教授

関連する研究課題

課題代表者

高村 健二

担当者