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底棲魚介類の初期減耗要因の解明:再生産期の異なる種の比較によるアプローチ(平成 24年度)
Elucidation of factors affecting mortality at the early life stages of megabenthic animals: comparative study using species having different reproductive seasons

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1113CD005
開始/終了年度
2011~2013年
キーワード(日本語)
個体数変動,初期生活史,底棲魚介類,貧酸素,東京湾
キーワード(英語)
population dynamics, early life history, megabenthos, hypoxia, Tokyo Bay

研究概要

東京湾の底棲魚介類の資源量は近年低水準で推移しており、回復の兆しがみられない。資源回復を図るためには、資源量増加を抑制している要因を明らかにすることが不可欠である。本研究は、東京湾の優占種であり、再生産時期の異なるシャコとマコガレイを対象として、両魚種の生活史初期の生残に影響する因子を解明する。特に、生活史初期の餌料条件および環境因子(水温、溶存酸素濃度)に着目し、これらの因子が初期減耗に及ぼす影響について野外調査と飼育実験により明らかにする。幼仔稚の食性を分子生物学的に調査する手法の開発も行う。得られた結果を総括し、再生産時期の異なる両魚種の初期減耗要因の共通点と相違点について評価する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

東京湾の優占種であり、再生産時期が異なるシャコとマコガレイの初期減耗要因を、野外調査と飼育実験の両面から解明することを目的とする。本研究では特に、生活史初期の餌料条件および環境因子が初期減耗に及ぼす影響を明らかにする。まず、幼仔稚の食性調査手法を開発した上で、餌料条件が初期減耗に及ぼす影響に焦点をあてて調査する。捕食者による被食も初期減耗要因となりえるが、研究期間と作業量を勘案し本研究では取り扱わない。初期減耗に影響する環境因子については、申請者らの過去の研究による知見に基づき、シャコでは溶存酸素(DO)濃度、マコガレイでは水温に着目する。
本研究は下記の3項目から構成される。
・ 生活史初期における食性の調査手法の開発(平成23年度)
シャコ幼生は餌生物を咀嚼するため、消化管内容物から形態学的に餌生物を同定することが困難である。マコガレイ仔魚については、消化管内容物の形態から餌生物種を推定することが可能だが、消化が進行したものについての同定は困難である。そこで、分子生物学的手法を応用し、餌生物種を定性的に把握する手段を確立する。これにより、両種の幼仔稚の棲息環境中における食性を明らかにすることが可能となる。
・ 餌料密度と環境因子が初期減耗に及ぼす影響の検証  (飼育実験:平成24〜25年度)
異なる餌料密度と環境因子(水温、DO濃度)を組み合わせた実験区における生残、成長および栄養状態を調査する。餌料密度、環境因子、および成長や栄養状態が、幼仔稚の生残に及ぼす影響を明らかにする。
・ 棲息環境中における初期減耗要因の推定  (野外調査:平成23〜25年度)
東京湾において各魚種の再生産期に幼仔稚を採集する。個体数密度の経時変化をもとに生残率の推定を行い、成長、食性、栄養状態についても調査する。水温、DO濃度および餌生物の種組成と個体数密度について、経時変化を調査する。これらの調査項目の相関関係を解析し、飼育実験により得られた結果も考慮に入れ、実際の棲息環境における初期減耗要因の探索を行う。

以上の結果をもとに、再生産の時期が異なるシャコとマコガレイの間で、初期減耗要因の共通点(餌料条件に関する斃死要因)と相違点(環境因子に関する斃死要因)について評価する。また、調査した因子(餌料条件、水温、DO濃度)以外に初期減耗に影響する因子が存在する可能性についても考察する。

今年度の研究概要

・ 東京湾における野外調査 (生物試料採集および環境調査)
シャコとマコガレイの幼仔稚の生活史特性と初期減耗要因を解明するため、東京湾において生物・環境調査を行う。シャコ幼稚個体を5〜12 月、マコガレイ仔稚魚を1〜4 月の期間に毎月採集する。その他の動物プランクトンも採集する。CTD-DO ロガーにより水温、塩分、DO 濃度を測定する。
・ 底棲魚介類の生活史初期における餌料生物の推定手法の開発
分子生物学の手法を応用し、シャコの幼若個体の餌生物種を定性的に把握する方法を確立する。18S rDNAを解析対象として、ホスト生物の遺伝子を選択的に除外できるPNA-directed PCR clampingを行う。得られた増幅産物をクローニングし、複数のコロニーについて塩基配列を決定する。Web 遺伝子データベースを用いて相同性検索を行い、分類群レベルで餌生物の推定を行う。以上により、シャコの生活史初期における食性を明らかにする。また、浮遊幼生期から着底までの生残率の異なる年について食性の比較を行い、餌料環境が加入の成否に及ぼす影響についても検討する。

課題代表者

児玉 圭太

  • 環境リスク・健康領域
    生態系影響評価研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(農学)
  • 水産学,生物学
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