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環境化学物質の生殖細胞に対する遺伝毒性リスク評価法の開発に関する研究(平成 22年度)
Development of method for risk assessment of genotoxicity on germ cells by environmental chemicals

予算区分
BC 環境-公害一括
研究課題コード
0810BC003
開始/終了年度
2008~2010年
キーワード(日本語)
変異原物質,生殖細胞,遺伝毒性,遺伝子導入マウス,DNA修復
キーワード(英語)
mutagen, germ cell, genotoxicity, transgenic mouse, DNA repair

研究概要

生殖細胞に起こる変異は遺伝的障害の原因となり、後世代に遺伝的負荷を課す。ヒトの遺伝的疾病に関連する遺伝子は、これまでに1700あまりが同定され、約45,000の変異が報告されている。生殖細胞の突然変異は主に精子形成過程で起こり、この変異誘発には環境化学物質の関与が示唆されている。実際、汚染された大気がマウス生殖細胞に変異を誘発することが示されている(Science, 304, 1008, 2004)。だがこれまでの環境化学物質の健康リスクに関する研究は、発がんとの関連で主に体細胞に対する変異作用に向けられており、生殖細胞に対する変異作用(遺伝毒性)を評価する手法は未確立のまま残されている。生殖細胞に対する化学物質の影響としては、近年、内分泌攪乱作用が取り上げられているが、これは発生期にある胎児に対する影響(催奇形性)を指標としており、生殖細胞DNAに対する変異誘発作用については評価の対象となっていない。化学品の分類と表示に関する世界調和システム(GHS, Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)においても「生殖細胞変異原性」が区分の一つとなっているが、これに答える十分な評価方法は確立されていない。本研究では、個体レベル、細胞レベル、分子レベルにおいて、環境化学物質の生殖細胞DNAに対する遺伝毒性作用を解明し、その知見を基礎に新規な生殖細胞に対する遺伝毒性評価法を開発することを目的としている。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

(1)トランスジェニックマウスを用いる生殖細胞遺伝毒性評価手法の開発
 申請者らは変異検出用のレポーター遺伝子λEG10を作製し、このDNAを用いて遺伝毒性検出用トランスジェニックマウスgpt deltaを開発した。このマウスを用いて、体細胞(肝臓、肺、大腸等)に起こる変異(点突然変異と欠失変異)については、これまでに多数の化学物質に関し解析を行ってきた。本研究ではgpt deltaマウスにbenzo[a]pyrene(BP)あるいはディーゼル排ガスを曝露させ、精巣に対する変異作用を検出し変異を分子レベルで解析することにより、遺伝毒性評価手法としての適切性について検討する。
(2)高感受性ノックインマウスを用いた評価手法の改良
 トランスリージョン合成(TLS)型DNAポリメラーゼは、損傷部位でのDNA合成を行い、遺伝毒性の回避に貢献している。BPなどにより生ずるDNA損傷のTLSに関わるDNAポリメラーゼκ(Pol K)を不活化させたノックインgpt deltaマウスの感受性を野生型gpt deltaマウスと比較する。

今年度の研究概要

昨年度に引き続き、Pol Kノックインgpt deltaマウスにディーゼル排ガスに含まれる変異原物質を曝露し、精巣および肺の変異頻度を測定する。また、ディーゼル粒子(DEP)をgpt deltaマウスに皮下注射などにより投与し、DEP成分が精巣・精子の突然変異発生に及ぼす影響を検証する。

備考

研究代表者:能美 健彦(国立医薬品食品衛生研究所)

課題代表者

青木 康展