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ナノ膜分離プロセスを組み込んだ熱分解ガス化-触媒改質技術の開発(平成 22年度)
Development of Waste Gasification and Catalytic Reforming Technologies with Molecular Separation Process using Nano Porous Membrane

予算区分
BE 環境-循環型社会
研究課題コード
0911BE008
開始/終了年度
2009~2011年
キーワード(日本語)
廃棄物処理,有害化学物質,大気汚染防止・浄化,廃棄物再資源化,環境分析,ナノ分離膜,水蒸気改質触媒,高改質活性,高耐久性触媒,熱分解ガス化
キーワード(英語)
WASTE PROCESSING, TOXIC CHEMICAL COMPOUNDS, PREVENTION OF AIR POLLUTION, RECYCLING OF WASTE, ENVIRONMENTAL ANALYSES, NANO POROUS MEMBRANE, STEAM REFORMING CATALYST, HIGH REFORMING ACTIVITY, HIGHLY DURABLE CATALYST, GASIFICATION DUE TO PYROLYSIS

研究概要

 本研究では、廃棄物系バイオマスからのエネルギー回収技術として、熱分解ガス化技術に基づく高効率水素製造および分散型高効率エネルギー利用システムの確立を最終目標とし、ナノ膜分離プロセス組み込み型低温熱分解ガス化・触媒改質技術の開発を行う。具体的には、廃棄物系バイオマスに含まれる腐食性成分や灰分の同時除去を考慮した熱分解ガス化技術の確立を目的とした未反応チャーによる吸着除去特性評価、安価で高い活性を有し耐久性に優れた改質触媒の開発を目的としたニッケル含有合金の直接酸化による触媒調製とその性能評価、水素分離性能に優れたナノ分離膜の耐食性評価を目的とした模擬ガスによる分離性能試験を実施する。各要素技術の開発および技術的検討に基づき当該システムの確立に資する有用な知見を得る。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

 H21廃棄物系バイオマスの種別選定の後、各種ごとの熱分解ガス化に関する特性について、1)分解生成物、2)熱分解温度影響、3)ガス化剤の影響について、反応平衡、反応速度特性を踏まえた定量的データを整備する。あわせて、熱分解ガス化過程で排出されるダストの芳香族化合物・硫化水素等の吸着特性を明らかにする。
触媒開発については、ニッケルを含有するステンレス合金を各種条件で高温酸化処理して得られた触媒を用いて、数種類の被毒元素を含む模擬ガスを用いた試験に基づき触媒活性劣化の抑制および、炭素質析出の抑制を達成しうる触媒調製を目標とする。
水素分離技術評価については、現状のセラミックナノ膜の水素分離特性について、廃棄物ガス化・改質ガス組成を模した標準ガスを用いて微量腐食性成分共存下での分離性能およびその劣化特性等を耐久試験により明らかにする。
 H22小型セラミックフィルターを組み込んだラボスケール熱分解ガス化装置を用いて上記試料を対象としたガス化試験を行い、特にフィルター上での未反応固体や飛灰の除去特性や圧力損失の経時変化等を実験的に明らかにする。あわせて、同フィルターの前後でのタール成分および硫化水素等の腐食性ガス成分の濃度変化を明らかにする。
前年度に調製される触媒を用いて、実際に廃棄物ガス化ガスの改質試験を上記ラボスケール装置にて実施し、触媒の耐久性向上に資するデータ収集・整備を行う。さらに、希土類—ニッケル系合金を各種条件で高温酸化処理して得られた触媒を用いて、さらなる活性劣化の抑制、炭素質析出の抑制を目標とする。また、前年度開発触媒も含めて、助触媒の坦持による長寿命触媒の開発を次段階の目標とする。
 H23前年度までに開発された触媒を有効に利用できる改質反応炉の最適設計を行い、水蒸気改質、部分酸化、ドライリフォーミングなどの可能性を検討し、最適な触媒改質反応システムの提案を目標とする。
改質ガスからの水素分離用ナノ膜分離装置設計を行い、上記ラボスケール設備を用いた同装置の耐久性・連続運転の検証を行う。当該検証に基づき、ガス化剤用純酸素製造プロセス、水性ガスシフト反応プロセス、シフトガス精製用スクラバーを含むトータルプロセスに対して、プロセスシミュレーターによる実稼働シミュレーションを行い、最適なプロセス運用のための設計要件を整備する。

今年度の研究概要

1. 廃棄物系バイオマスの熱分解ガス化およびダスト・触媒被毒成分同時除去技術の開発(国立環境研究所)
 廃棄物系バイオマスの利活用を促進する上で、地域偏在型バイオマスの分散型高効率利用技術の確立は最も効果的な手段の一つと考えられる。比較的均質で循環利用が容易なバイオマスにはマテリアルリサイクル利用技術の適用が進んでいるが、資源利用性の低いものに対し有効な手法であるエネルギー回収については、ガス化溶融の導入や発電効率の向上が図られているものの総体的には低水準にとどまっている。本研究では、新たなエネルギー回収技術として、高効率水素製造技術およびこれに基づく分散型高効率エネルギー利用システムの確立を目的とし、比較的小規模な施設においても十分な適応性を有するナノ膜分離プロセス組込型低温熱分解ガス化・触媒改質技術の開発を行う。主要な開発目標項目は、改質阻害成分の効果的除去技術開発、合金酸化触媒の適用性と耐久性評価、および腐食性成分挙動を含む改質ガスのナノ膜分離特性を明らかにすることである。2. 高耐久性改質触媒の開発(名古屋大学)
 様々な被毒物質に耐性のある触媒を開発すること、プロセス全体の規模やコストから貴金属を避けた触媒設計を行うこと、固体(炭素質)析出への対応等が要件となる。また、従前の水蒸気改質反応に加え、部分改質、二酸化炭素改質への対応も視野に入れる。このため、ニッケル等の活性金属を担体に強固に結合させた新しい触媒が必要となる。そこで、活性金属を含む合金を酸化処理し、活性金属が酸化物担体に高分散かつ強固に結合した触媒を調製する。これまでの検討を基に、La-Ni系水素吸蔵合金や、Niを含有するステンレス鋼などを原料として、さまざまな酸化前処理条件で調製を行い、さらに各種助触媒を坦持することで目標とする触媒開発を目指す。
3. ナノ膜分離による水素精製特性評価(ノリタケカンパニーリミテッド:委託)
 セラミック製ナノ分離膜を製作し、その構造的特性と改質ガスの分離特性との関連性を試験・測定することで、定量的に評価する。さらに、国立環境研究所の試験結果等を踏まえて、分離膜の改良を図る。

備考

分担者:魏立綱(NIESポスドクフェロー)、 田川智彦、山田博史(名古屋大学大学院工学研究科)

課題代表者

川本 克也