- 予算区分
- BD 環境-環境技術
- 研究課題コード
- 0809BD005
- 開始/終了年度
- 2008~2009年
- キーワード(日本語)
- 遺伝子組換え,セイヨウアブラナ,DNAアレイ,DNAマーカー
- キーワード(英語)
- Genetically modified, oil seed rape, DNA array, DNA markers
研究概要
ナタネ類(セイヨウアブラナ、在来アブラナ、カラシナ)は稔性のある雑種を形成する。国内の輸入港周辺において、遺伝子組換えセイヨウアブラナの生育が確認され、これらがナタネ類と交雑し、除草剤耐性遺伝子などがナタネ類のゲノム中に浸透する可能性が懸念されている。本研究では人為的に導入した遺伝子が、自然環境条件下で交雑によって近縁種へ伝播する可能性を、分子生物学的手法で定量的に評価する研究を可能にするため、種特異的分子マーカーをDNAアレイ法を用いて効率よく多数取得する技術を開発する。
研究の性格
- 主たるもの:技術開発・評価
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
ナタネ類(セイヨウアブラナBrassica napus, 在来アブラナB. rapa, カラシナB. juncea)は互いに交雑可能で、稔性のある雑種を形成する。国内の港・道路・一部河川敷において、遺伝子組換え(GM)セイヨウアブラナの生育が確認されたことから、これらが自然環境中に生育しているナタネ類と交雑し、除草剤耐性遺伝子などの組換え遺伝子がナタネ類のゲノム中に浸透する可能性が懸念されている(浸透性交雑)。現在、組換え遺伝子の浸透交雑性は、「交配実験によって雑種を形成するか」、「形成された雑種が稔性を持つか」という定性的な評価で行われているが、将来、多種・多様な GM 農作物が輸入されることを想定した場合、組換え遺伝子の浸透性交雑性を“迅速”かつ“定量的”に評価する技術の開発が必要である。浸透交雑性の定量化は、多数の種特異的分子マーカーを用いて、人為的に遺伝子が導入された染色体のうち、交雑後に安定に残存する部位を特定し、組換え遺伝子と残存部位との連鎖率を指標に評価することで実現する。しかしながら、種特異的分子マーカーを多数取得するには莫大な労力とコストが必要であり、その飛躍的な効率化が求められる。さらに、アブラナ属(Brassica)作物は非常に近縁であることから、種間変異があるゲノム領域を高い精度で探索する手法の開発も重要となる。そこで本研究では、種特異的マーカーをcDNAアレイを用いて効率的に取得する技術を開発する。
今年度の研究概要
セイヨウアブラナ−カラシナ識別マーカーの開発
1)cDNAアレイ法による発現遺伝子の解析
セイヨウアブラナおよびカラシナの本葉から mRNA を抽出して、逆転写反応により cDNAを合成する。各遺伝子由来の cDNA を同じ量にするため、cDNA の平均化反応を行う。平均化反応の最終段階の PCRによる cDNA 増幅時にそれぞれ Cy-5 および Cy-3 で蛍光標識する。シロイヌナズナのオリゴ cDNA アレイに蛍光標識 cDNA をハイブリダイズさせ、それぞれの種における各遺伝子由来のシグナルをスポットごとに取得する。
2)種間変異領域の探索
得られた各スポットのシグナルデータを統計処理し、蛍光シグナル強度に2種間で大きな差があるスポット(変異スポット)を持つ遺伝子を 100個選抜する。
3)変位領域の同定
2)で抽出した変異スポットに対応するシロイヌナズナの塩基配列情報からプライマーを設計し、セイヨウアブラナとカラシナのそれぞれのゲノムDNAを鋳型にして PCR を行う。
予想される分子量で増幅が認められた PCR 産物をサブクローニングして塩基配列を決定し、それぞれの種の塩基配列を比較して種間変異部位を特定する。
4)種特異的分子マーカーの設計
・特定した種間変異を、PCR増幅断片長の多型(STSマーカー)や、制限酵素断片長多型(PCR-RFLPマーカー)として検出できるように、変異領域を特異的に増幅するPCRプライマーを設計する。設計したプライマーを用いて、もう一度セイヨウアブラナまたはカラシナの DNA を鋳型にして PCR を行ない、2種を区別できることを確認し、種特異的マーカーとしての有効性を検証する。
5)種間変異領域の探索方法の改良
2)について選抜条件を変え、2)−4)を同様に繰り返し、50%以上の成功率になるような選抜条件(変異スポット選抜のアルゴリズム)を求める。
- 関連する研究課題
- 0 : その他の研究活動
課題代表者
中嶋 信美
- 生物多様性領域
環境ゲノム研究推進室 - シニア研究員
- 農学博士
- 生物学,農学,生化学
担当者
-
西沢 徹