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2013年1月31日

日本における土壌炭素蓄積機構の定量的解明と温暖化影響の実験的評価(特別研究)
平成21~23年度

国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-105-2013

表紙
SR-105-2013 [10.9MB]

 陸域バイオマスの2~3倍の炭素を蓄積するといわれる土壌圏は、温暖化に伴う土壌有機物分解の促進により二酸化炭素の放出源となりうる一方で、土壌炭素蓄積量を増加させることが可能となれば大気中の二酸化炭素の吸収源になり、温暖化の緩和効果も期待されています。特に火山灰を母材とする日本の土壌炭素の分解・蓄積と関連した温暖化応答のメカニズムについての知見は限られており、温暖化に対する土壌炭素蓄積の将来予測は、大きな不確実性を伴っています。これは、分解特性の異なる様々な有機炭素が混在していることが主な原因の一つとなっています。

 そこで本研究では、土壌有機炭素の蓄積と分解に関わる土壌粒子と有機炭素の存在形態として、土壌の物理特性に着目しました。土壌を比重により分画し、異なる比重に区分された土壌有機炭素について、放射性炭素同位体(14C)を用いて分解速度を算出し、さらに土壌培養実験による温暖化影響評価を実施しました。その結果、日本に広く分布する火山灰母材の土壌の炭素蓄積・分解プロセスの解明に向けた基礎データを得ることができました。

 この結果、土壌を構成する様々な滞留時間をもつ有機炭素プールについて個別に分解速度を実測することにより土壌動態モデルにおける仮想的コンパートメントと対応付けが可能となることから、モデル計算結果における誤差要因(不確実性)の軽減が期待されます。

 本研究により得られた知見が、気候変動や土地利用変化に伴う炭素蓄積量の長期的な変動の予測で用いられる炭素動態シミュレーションモデルの高精度化に向けた新たな取り組みの一歩となることが期待されます。

(環境計測研究センター 内田 昌男(編者))