地球環境研究センターの任務 —地球環境の保全に向けて全体像の構築を—
論評
市川 惇信
本年10月1日に「地球環境研究センター」が発足する。地球環境保全の総合調整の任務を負った環境庁が,研究面での国の総力を結集するために本研究所に設置したものである。当面3つの仕事が予定されている。
第一は,地球環境研究の計画・過程・結果について調整・総合化を行うことである。具体的には,地球環境研究総合推進費による研究の計画を支援すると共に,研究の進行過程における調整の場を提供し,成果の全体的取りまとめを行う。
第二は,地球環境研究の支援である。スーパーコンピュータをはじめ共同利用の大型のハードウエア・ソフトウエア,および地球環境に関するデーターベースの整備,などが計画されている。
第三は,地球環境のモニタリングである。陸,海,空,宇宙からの観測体制の整備とその実施を進める予定である。
地球環境はきわめて広範かつ複雑な事象である。日本全体・世界全体の観測・調査・研究の結果を結集しても,きわめて僅かのことが判るだけである。しかし,十分な成果が出るまで待つわけにはいかない。患者のことは判ったが患者は死んだ,では済まないからである。100枚のジグゾーパズルの3〜4枚から全体像を推定しなければならない。
2つの途がある。第一は,近代科学のとってきた途である。ニュートンは惑星の運動から動力学の体系を構築した。大胆な仮説のもとに部分のデータから全体を構築する途である。第ニは,ジグゾーパズルの中から調べるべき適切なピースを選択することである。研究成果を集積しモデルを作り,次に研究すべき領域を見いだすことである。以上の2つはセンターが果たすべき重要な役割である。
(いちかわ あつのぶ,副所長)
目次
- 国立環境研究所の発足に寄せて巻頭言
- 嵐に向かって翔べ論評
- 国立環境研究所組織の紹介論評
- 新たな研究所における研究企画の役割論評
- 国立環境研究所記念式典を挙行所内開催又は当所主催のシンポジウム等の紹介、報告
- 研究支援体制の役割論評
- 地球史,人類史の中での地球環境研究 −地球環境研究グループの発足にあたって−論評
- 「自然環境保全研究分野」の研究について論評
- 「環境保全対策分野」の発足に当たって論評
- 「環境リスク評価分野」の発足に当たって論評
- 社会環境システム部とは論評
- 化学と環境と論評
- 環境健康部の役割論評
- 基盤研究部門としての大気圏環境部論評
- 水・土壌・地下環境の保全をめざして論評
- 生物関連研究の新たな体制論評
- 環境情報のセンターを目指して論評
- 環境研修センターの紹介論評
- 第13回 研究発表会、特別講演会報告所内開催又は当所主催のシンポジウム等の紹介、報告
- 編集後記