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2019年4月26日

第4回NIES国際フォーラム開催報告:持続可能なアジアの未来に向けて

【行事報告】

杦本 友里、芦名 秀一

 国立環境研究所(NIES)では、東京大学、アジア工科大学院及びアジアの様々な研究機関とともに、アジアの持続可能な未来に関して目指すべき方向についての議論を促進することを目的に、2015年度からNIES国際フォーラムを毎年度開催しています。また、この国際フォーラムを通じて、アジア地域の研究機関との研究ネットワークをさらに発展・充実させることも目指しています。

 「第4回NIES国際フォーラム/4th International Forum on Sustainable Future in Asia」は、2019年1月23日~24日にベトナムの首都ハノイにおいて、日越大学を共催機関に迎えて開催しました。現地機関の研究者のほか政府関係者など講演者も含めて約150名の参加者を得て、アジアの環境問題について様々な角度から発表と議論が行われました。

参加者の集合写真
写真1 第4回NIES国際フォーラム/4th International Forum on Sustainable Future in Asia 参加者の集合写真

 国際社会は今、持続可能な社会の実現に向けた動きを加速しています。2015年には第3回国連防災会議で「仙台防災枠組2015-2030」が、同年の国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択され、COP21では「パリ協定」が合意されました。私たちが住むアジアも、経済と環境の両面において持続可能な地域へと変わっていくことが求められています。今回のフォーラム開催地であるベトナムを含むメコン河流域の国々においても、気候変動への対応、急速な工業化に伴う廃棄物の管理や、環境中の様々な物質による健康影響などが重要な課題となっています。

 これらを踏まえて、今回のフォーラムではアジア地域で重要な課題である「洪水リスクと廃棄物管理」、「メコン河流域の環境変化と適応戦略」、「環境研究と公衆衛生の改善」そして「アジアの持続可能な発展」の4つのテーマを取り上げました。

渡辺理事長の開会挨拶の写真
写真2 NIES渡辺理事長による開会の挨拶

 最初に主催・共催機関の各代表から開会の挨拶がありました。それぞれに今回のフォーラムの開会を祝すとともに、2日間で展開される議論への期待が添えられました。続く基調講演では、ベトナム国家大学ハノイ校のMai Trong Nhuan元総長からベトナム国内での気候変動対策と持続可能な開発の相乗効果に関する知見が共有されたほか、日越大学の古田元夫学長から持続可能な開発を基本理念とする日越大学の設立にまつわる講演が行われました。

Nhuan元総長による基調講演の写真
写真3 ベトナム国家大学ハノイ校Nhuan元総長による基調講演
古田学長による基調講演の写真
写真4 日越大学古田学長による基調講演

 セッション1(洪水リスクと廃棄物管理)では、アジアの都市で頻発する洪水のメカニズムを追求した結果、水路に捨てられる廃棄物が問題であることや、その解決に向けた方策に関する研究の報告、都市洪水を防ぐために人々の行動変容が必要であり、それをどのように促していけるかの議論が行われました。セッション2(メコン河流域の環境変化と適応戦略)では、気候変動影響やダム建設などの環境変化に対して、どのように対応していくかが各発表の焦点となりました。報告では、メコン河流域の上流から下流までの異なる環境条件とともに、自然科学から社会科学まで幅広いアプローチに基づく内容が取り上げられました。セッション3(環境研究と公衆衛生の改善)では、日々過ごす環境に潜む健康への影響について議論しました。話題提供者からは、ベトナムだけでなくミャンマー、タイ、カンボジア、モンゴル、ラオス、日本と7カ国の大気汚染や安全な水の確保など、環境中の物質と健康に与える影響に関する研究事例が共有され、非常に国際色豊かなセッションとなりました。セッション4(アジアの持続可能な発展)では、学際的な研究を実施していくことが気候変動対策の緩和策と適応策の両立や持続可能な開発を目指すにあたってさけられないことを示すとともに、資金的に持続可能にすること、そして科学と政策をつなげる橋渡しをする必要があることが強調されました。

ポスター発表の写真
写真5 ポスター発表の様子

 今年もポスターセッションを行い、フォーラムの4セッションの内容に留まらない幅広い研究テーマについて、アジア各国から総勢55名がポスター発表を行いました。

 フォーラムの締めくくりには、NIES、東京大学国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構、アジア工科大学院アジア太平洋地域資源センター及び日越大学が共同で、アジア太平洋域における今後の環境問題解決に向けた研究連携を強化し議論を牽引していくべく、共同声明を発表し、今後さらにネットワークを強固にしながら研究を進めていく意思を示しました。

 今年の国際フォーラムの参加研究機関は約40機関と、第1回の約25機関から年々増えつつあり、フォーラムを通じてアジア地域内でのつながりが拡大していることを実感できる会議でした。このフォーラムの成果が、登壇者、参加者の皆様のそれぞれの今後の活動において、新しいアイディアや課題解決に向けたさらなる行動につながっていくことを期待しています。

(杦本友里・研究事業連携部門/芦名秀一・企画部国際室 室長)

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