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2017年2月28日

国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)
京都議定書第12回締約国会合(CMP12)
パリ協定第1回締約国会合(CMA1) 参加報告

衛星観測センター 松永恒雄
地球環境研究センター 齊藤 誠
社会環境システム研究センター 藤野純一・亀山康子

はじめに

 2016年11月7~18日モロッコのマラケシュで、表題の3会合ならびにこれらの補助機関会合が開催されました。パリ協定が当初の想定より早く発効しその第1回目の締約国会合が開催されたことで世間の注目を集めましたが、会議の大半は昨年の合意内容を実施に移すための実質的な議論に費やされました。国立環境研究所(以下、「国環研」)からは、衛星観測センターより松永恒雄センター長、地球環境研究センターより齊藤誠主任研究員、Pang Shijuan高度技能専門員、社会環境システム研究センターより亀山康子副センター長、藤野純一主任研究員、久保田泉主任研究員の6名が参加しました。以下、同会議での国環研の活動を紹介します。

展示ブース

写真1 国立環境研究所の展示ブース
写真2 展示ブースでPoken を使用している様子

 COP22の第一週には、2009年に打上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)、および2018年度打上げ予定の同2号機(GOSAT-2)に関する活動報告を中心に、国環研の活動を紹介する展示ブースを設置しました。展示ブースでは、主にポスターを用いてGOSAT/GOSAT-2プロジェクトの概要、観測結果やプロダクト、過去に行った報道発表等について紹介しました(写真1)。今回のCOP22では、展示ブースでのリーフレット等の紙媒体の配布が基本的に禁止され、その代わりにPokenという情報収集・交換用デジタルプラットフォームが導入されました(写真2)。会場で配布される手の形をしたUSB装置(個人用Poken)を各ブースのテーブルに貼り付けられたPokenタッチポイントに触れさせることで、ブースを担当する大学や研究機関がアップロードした資料へアクセスするためのHTMLファイルが個人用Pokenに記録される仕組みになっています。Pokenの導入により、紙の使用量を大幅に削減出来るほか、ブース担当者が会場まで運ぶ手荷物が減り、ブースも非常にすっきりすることが利点としてあげられます。その一方で、個人用PokenをPokenタッチポイントにタッチするだけで無言で去っていく来場者が見られたこともあり、今後は展示担当者のコミュニケーション技術の向上が望まれます。

サイドイベント

 衛星観測関連では、11月14日(月)日本パビリオンにおいて「IPCCインベントリガイドラインにおける人工衛星データ利用に向けた取り組み」というサイドイベントが宇宙航空研究開発機構の主催、環境省・国環研の共催で開催されました。本サイドイベントではIPCCが定めたガイドラインに従って各国が作成している温室効果ガス排出インベントリの現状と、今後のインベントリ作成における人工衛星による温室効果ガス観測データの利用について議論が行われました。国環研からは松永が「温室効果ガス排出インベントリ検証のための衛星による温室効果ガス濃度データの利用法について」という題目で講演し、衛星とインベントリの比較方法について解説した後、GOSATデータを用いた最新事例の紹介をしました(写真3)。

 また今回初めての試みとして日本パビリオンの一角をお借りし、GOSATデータに基づく全球二酸化炭素濃度分布図の動画(約3年間、6時間刻み)を直径1.5mの球体(風船)に2方向からプロジェクタで投影する展示も行いました。本展示については事前準備と会場での調整にかなりの時間を割きましたが、同じく日本パビリオンに設置された鉄道模型(ジオラマ)と合わせて、多くの方々の注目を集めました(写真4)。

写真3 サイドイベントにおける松永の講演の様子
写真4 二酸化炭素濃度の動画が投影された風船、鉄道模型と一緒に写真を撮る日本パビリオン訪問者

 低炭素社会研究関連では、COP22公式サイドイベントとして、11月9日、マレーシア工科大学、海外環境協力センター(OECC)、環境省とで「パリ協定の実現に向けた低炭素アジアの促進:国および都市における低炭素計画と市場メカニズムの経験」を共催しました。世界資源機関(WRI)から低炭素計画の世界展開の様子、環境省の都市間連携の取り組みとAIM(アジア太平洋統合評価モデル)による支援、そしてベトナム、マレーシアの事例について会場と共有しました。最後に、COP21以降の成果として、マレーシア工科大学の支援で作成されたクアラルンプール市低炭素社会シナリオ、AIM チームが支援したベトナム国ハイフォン市、ダナン市低炭素シナリオを公表しました(写真5)。企業や自治体等のいわゆる非国家主体への期待をさらに感じたCOP22でした1)

写真5 低炭素社会シナリオに関するサイドイベント

 また、11月18日には日本パビリオンにて、「気候変動緩和策の進捗を計測するための指標開発を目指した研究に関する最新報告」を名古屋大学や地球環境戦略研究機関と共催し、気候変動緩和政策進捗指標(C-PPI)の概要を紹介しました。

ウェブサイト

 久保田主任研究員は全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)のウェブサイトにて現地報告を掲載し、国環研ウェブサイトにも転載されています。本会議全体の概要にご関心がある方はこちらを、ご覧ください。
http://www.nies.go.jp/event/cop/cop22/index.html

 また、政府代表団からの報告は、地球環境研究センターニュース2017 年3 月号を、ご覧ください。
http://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201703/315002.html

1) 藤野純一、パリ協定を実施するのは誰か?次の主役は“non-state actors”、IGES Climate Updates
http://www.iges.or.jp/jp/climate/climate_update/201611_fujino.html

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