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2016年2月29日

構内の自然を大切にするために
植生保全優先区域の設置

構内緑地等管理小委員会委員長
竹中 明夫

 国立環境研究所では2001年に環境配慮憲章を定めました。そのなかでは、環境の保全につながる調査や研究の成果を社会に提供するだけでなく、研究所の日々の業務でも環境に配慮することを定めています。とくに省エネルギー、省資源、廃棄物の削減と適正な処理、化学物質の適正な処理に注意するとしていました。2013 年、これらに加えて生物多様性の保全への配慮があらたに書き込まれました。また、これにあわせて構内緑地等管理小委員会(以下、委員会)が作られました。構内の緑は見た目の美しさという観点だけで捉えられがちですが、これも地域の自然の一部です。生き物たちのくらしの場であることに注意しながら管理し、生物多様性の保全に貢献することを目指しています。

 委員会がおかれた後、古くなった排水配管の交換工事による地面の掘り起こしや、あらたな建物の設置などがありました。工事にともなう木の移植や伐採について施設課・担当業者と委員会とで相談するようになったのは前進です。一方で、木の下の地面に生えている草花にはとくに注意は向けられませんでした。けれども、構内の緑地には、市街地や都市公園では見られない野生の植物がいろいろ生えています(写真1)。40種類以上のチョウが構内で観察されるのも、そうした多様な緑があればこそです。必要な工事は進めつつ、さまざまな野生植物や、構内でくらす昆虫、鳥、動物などにも可能な範囲で配慮してこそ、憲章の改訂が活かされたと言えるでしょう。

 そうはいっても、どこでどのような作業をするとき何に配慮したらよいのか、いちいち委員会に諮るのは大変です。そこで、生きものへの配慮に特に重点を置く区域をあらかじめ定めてマップを所内で公表し、ここでの作業はなるべく避ける、やむをえず作業をする場合には影響を避けたり減らしたりする方法を検討する、というルールが作られました。「研究所構内の緑地等の改変を伴う事業を計画するに際しての環境配慮の仕組みについて」(平成27年7月27日環境管理委員会決定)です。敷地の南側の林(写真2)のほか、研究本館のとなりの池とその周辺部(写真3)などが植生保全優先区域とされました。こうした取り組みは、研究機関としても先進的なものであると自負しています。今後はこの仕組みを活かしつつ、生きものが豊かな構内の自然を維持していきたいと考えています。

(たけなか あきお、生物・生態系環境研究センター 上級主席研究員)

写真1 土手に生えているセンブリ
写真2 構内南側の明るい林
写真3 研究本館南の「秋津の池」で泳ぐカルガモ