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2011年4月28日

環境研究の中核的機関としてのさらなる発展を目指して 〜第3期中期計画の開始に向けて〜

齊藤 眞

1.はじめに

 国立環境研究所は、平成13年4月に環境省の直轄機関から独立行政法人になり、ちょうど10年がたちました。この間、5年間を単位とする中期計画を立てて、その達成に努めてきましたが、この4月からは第3期中期計画が開始されます。

 平成18年度からの第2期中期計画期間においては、非公務員型の独立行政法人として地球温暖化などをはじめとする4つの重点研究プログラムに重点を置きつつ環境研究の推進に努めてきました。この実績を踏まえたうえで、環境省からは第3期に向けては環境政策への貢献を担う国内外の中核的環境研究機関としてのさらなる活動の強化を求められました。その内容は、平成23年3月1日付けで環境省より定められた「独立行政法人国立環境研究所の達成すべき業務運営に関する目標(中期目標)」に示されています。

2.第3期中期計画における研究の推進について

 国立環境研究所のこれからの5年間については、中期目標を受けて国立環境研究所が策定した「第3期中期計画」にその内容が詳しく書かれています。中期計画は法律に基づいて作られるものですので、業務の内容から予算や施設の管理に係わる事項など多岐にわたりますが、ここでは第2期と大きく体制などを変更する研究部門について紹介します。

(1) 環境研究の体系的推進

 環境研究の中核的研究機関として、中長期的視点に立って将来の環境研究の課題を見通して研究を進めるために、新たな環境研究の体系をその柱となる研究分野で構成して、基礎研究から課題対応型研究まで一体的に、分野間連携を図りながら推進します。具体的には、次の8つの研究分野を設定しました。

 a. 地球環境研究分野
 b. 資源循環・廃棄物研究分野
 c. 環境リスク研究分野
 d. 地域環境研究分野
 e. 生物・生態系環境研究分野
 f. 環境健康研究分野
 g. 社会環境システム研究分野
 h. 環境計測研究分野

(2) 課題対応型研究プログラムの推進

 重要な環境研究課題に対応するために図1に示す10の研究プログラムを設定し、所内連携及び国内外の関連研究実施機関・研究者との連携のもとに進めます。

図1
図1 研究プログラム

(3) 環境政策立案等への貢献

 政策貢献型の研究機関として、国立環境研究所の研究成果が国内外の環境政策の立案や実施、見直し等に貢献するよう、さらなる取組の強化を行います。

 昨年運用を開始した環境情報メディア「環境展望台」などを通じて、環境の状況等に関する情報、環境研究・環境技術等に関する情報を引き続き収集・整理し、提供していきます。

 また、長期的な取組が必要な環境研究の基盤の整備事業として、衛星による温室効果ガスモニタリングを含む地球環境モニタリング等の環境の観測・解析、環境試料の保存・提供、リファレンスラボ機能の整備、環境に関わる各種データのデータベース化などを研究基盤として整備するとともに、今期から実施が本格化する「子どもの健康と環境に関する全国調査」について、環境省の基本計画に基づきコアセンターとして調査の総括的な管理・運営を行います。

3.新しい組織体制について

 国立環境研究所は、この4月から第3期中期計画を着実に実施していくために新しい組織体制で臨みます(図2)。

図2(クリックで拡大表示)
図2 研究所の組織

(1) 研究部門の新体制

 これまでの3センター、1グループ、6つの基盤研究領域、1つのラボラトリーという体制から、上記2(1)で示した8つの研究分野ごとにセンターを設置します。各センターでは、関連する重点・先導プログラム、基盤的な調査研究、モニタリング等の事業などを一体的に推進します。各研究者はいずれかのセンターに所属することになります。

 また、この8研究分野のもとで進める10の研究プログラムについては、それぞれにプログラム総括者を置くとともに連携推進体制を整備し、目標の達成を図ります。

(2) 研究連携部門の新設

 環境研究の中核的機関としての機能の充実を図るために、新たに研究連携部門を設け担当の審議役を配置し、国内の関係機関との連携の強化、アジア等の国際環境研究の戦略的推進を図ります。

(3) 管理部門の新体制

 企画部内の広報・国際室を広報室、国際室とそれぞれ独立させ、広報、アウトリーチ活動や国際関係業務の充実を図るとともに、これまで環境情報の収集・提供を担ってきた環境情報センターを管理部門内の環境情報部として位置付け、より効果的な業務の推進を図ります。

4.おわりに

 この5年間は人件費の定率削減のために正規の研究職員が増やせず、契約研究者の助力を得て研究を進めてきました。また、業務費も施設費も伸びない中で発足以来37年目を迎え施設の老朽化対策なども大きな課題となっています。3月の大震災では幸い壊滅的な被害は受けなかったものの、一部の研究には少なからず影響が生じると思います。

 しかし、国立環境研究所に課された使命は重く、4月より新たな体制のもとで新たな中期計画の達成を目指して今後とも活動していきます。この場を借りまして、引き続き関係の機関、関係の方々のご指導、ご協力をお願いする次第です。

 

(さいとう まこと、企画部長)

執筆者プロフィール

 平成21年7月に日本環境安全事業株式会社から国立環境研究所企画部長に着任。千葉県生まれ。昭和55年に京都大学大学院(衛生工学専攻)を修了後厚生省に入り、土木系の技官として廃棄物処理、水質保全、水資源開発などを担当してきました。平成15年度から2年間環境省において研究所担当の室長であったこともあり、国立環境研究所には大変親しみがありました。初めての勤務ですが、このような変革の時期に研究所のために仕事できることは、大変幸せだと感じています。