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国立環境研究所研究報告 R-180-2004(平成16年3月発行)
「ILASプロジェクト最終報告書」

 改良型大気周縁赤外分光計ILASは,高緯度地域の成層圏オゾン層を監視・研究するために環境省が開発した衛星搭載センサである。ILASの搭載衛星ADEOS(「みどり」)は,1996年8月に宇宙開発事業団(NASDA,現在の宇宙航空研究開発機構 JAXA)のH-IIロケットにより種子島宇宙センターから打ち上げられ,1997年6月30日に衛星の電源系統の異常により運用を停止した。この間にILASによって大量の観測データが取得され,当所において処理されたオゾン濃度分布などのプロダクトが,国内外の研究者に提供されている。これに並行してデータ質の評価,各種検証データによる検証解析が進められ,それらの検討結果に基づく処理アルゴリズムの改訂とデータの再処理が継続して行われた。本報告書は,主としてこれまでのデータバージョンの推移の概要,平成14年3月に最終バージョンとして作成されたILAS Version 6.0データについての概要,検証実験データの解析,他衛星データとの比較結果を中心に取りまとめたものである。

(成層圏オゾン層変動研究プロジェクト 笹野泰弘)

国立環境研究所研究報告 R-181-2004(平成16年3月発行)
「ILAS-II Correlative Measurement Plan」

 環境省が開発した衛星搭載用のオゾン層観測センサILAS-IIは2003年1月から10月までに5900回余りの測定を実施した。本報告書はILAS-IIの取得データから国立環境研究所が開発した高度分布導出アルゴリズムによって生成された大気中濃度のデータの質を評価するために必須な検証データ取得に関する実験計画を詳述したものである。言語は英語である。検証データ取得のための各種実験は環境省などのファンドにより実施される。実際にはILAS-IIが搭載されていたADEOS-II衛星の運用停止のために,予定されていた主な大気球実験は中止となったが,部分的には南極昭和基地やスウェーデンのキルナなどから,小気球などを利用してエアロゾルやオゾンの観測が実施された。その他にも国際的なILAS-IIの検証実験チームメンバーによる実験実施計画が掲載されている。特に今後ILAS-IIの観測データのデータ質検証解析を実施する研究者にとっては,どのような検証データがどのような測定原理と確度・精度で取得されたのかを知るための一助となるようにまとめられている。

(成層圏オゾン層変動研究プロジェクト 杉田考史)

国立環境研究所研究報告 R-182-2004(平成16年3月発行)
「NIES-Collection LIST OF STRAINS Seventh Edition 2004 Microalgae and Protozoa」

 本書は国立環境研究所微生物系統保存施設に保存されている微生物培養株のリストである。微細藻類24綱1,215株と原生動物6株を掲載している。第6版を出版した2000年以降に寄託された株等460株余りが追加された。微細藻類については,現在知られているほとんどの綱を網羅する多様な分類群が保存されていることになる。18Sリボソーム遺伝子の塩基配列解析による保存株の分類学的再検討を行った結果も反映されている。また,新たに寄託された,いわゆる無色鞭毛虫も加えられた。今後はこれらの生態学的にも系統進化学的にも重要な株の収集にも力を注ぎたい。
 種名,産地,履歴等の株データの他に培養方法,培地組成や作成方法等を掲載しているが,第7版では,これらに加えて凍結保存株,有毒株,及び遺伝子データのリストを掲載した。特に遺伝子データは274株572件に及んでいる。また,株の移転に関する同意書(MTA)を整備した。ホームページの充実が第一であるが,是非ご利用いただきたい。

(環境研究基盤技術ラボラトリー 笠井文絵)

「環境儀」NO.12 東アジアの広域大気汚染‐国境を越える酸性雨 (平成16年4月発行)

 酸性雨の問題は,酸性の雨,雪,霧の問題から,汚染物質が雨に溶け込んだりガスや粒子として地上に舞い降りたりして引き起こす広い意味での環境問題となっています。国立環境研究所では,国立公害研究所の時代から酸性雨の問題の解明・解決のための取り組みを続けています。現在では,大気汚染物質が季節風などで長距離を移動することが明らかとなり,酸性雨の問題が一国の問題として解決できないことが認識され,また,日本では東アジア地域の大気汚染の影響が危惧されることから,経済発展が進む中国などとの共同研究が進められています。今回の環境儀では,これまでの酸性雨研究の流れと最近の東アジア地域における発生源インベントリーの構築や航空機観測などの新たな研究の展開を説明し,今後の取り組み,それから世界の第一線の酸性雨研究との関連が理解しやすいように解説されています。これらの先端技術を用いた地道な取り組みにより東アジア地域の環境問題の実態解明と対策に貢献できると考えられます。

(「環境儀」第12号ワーキンググループリーダー 藤巻秀和)