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NIES Annual Report 2003 AE-9-'03(平成15年12月発行)

 本書は,国立環境研究所の平成14年度の活動状況を海外の環境研究者や環境行政に携わる方々に分かりやすく紹介することを目的に編集したものである。研究所の組織,重点特別研究プロジェクトと政策対応型調査・研究の内容,各研究領域の成果,各センターの業務,国際交流,英文による発表リスト,研究所出版物,研究施設・設備と人員に関する概要が記載されている。従来と同様に,トピックスとなる研究成果を中心にカラー写真が多用されているので,読者にとって興味深く読みやすいものになっている。また,独立行政法人化以降昨年までのReportでは,7つの重点研究分野ごとに研究成果と発表リストがまとめられていたが,分かりにくいという指摘を受けて,この部分を組織ごとの成果および一括の発表リストにするという変更がなされている。

(編集委員会英文年報班主査 横内陽子)

国立環境研究所特別研究報告 SR-54-2003(平成15年11月発行)「地球温暖化の影響評価と対策効果」(中間報告)(平成13~14年度)

 本報告書は,平成13~17年度の5ヵ年の予定で実施されている重点特別研究プロジェクト「地球温暖化の影響評価と対策効果」の平成13~14年度,前期2年間の研究成果をとりまとめたものです。
 現在地球温暖化問題は,2010年に向け対策の方針を定めた京都議定書の合意のもと,その達成が緊急の課題になっています。本研究プロジェクトは,地球温暖化の現象解明・防止に資する科学的知見を提供するために,国立環境研究所において研究し蓄積してきた現象解明,影響評価および対策に関する研究成果を基礎にして,温室効果ガスの陸域や海洋の吸収,森林の炭素ストックなど炭素循環のメカニズムと変動要因を大気・陸域・海洋の観測から解明など,地球規模の温室効果ガスの変化を早期に検知する研究を進めています。また,気候変動およびそれらの影響を統合的に評価するモデルを開発・適用して,京都議定書およびそれ以降の温暖化対策が地球規模の気候変動およびその地域的影響を緩和する効果を推計,対策のあり方を経済社会の発展の道筋との関係で明らかにし,アジア地域の持続可能な発展に融合させる総合戦略について検討を行うなど,新しいニーズに応えることを目的として研究を推進しています。

(地球温暖化研究プロジェクト 井上 元)

国立環境研究所特別研究報告 SR-55-2003 (平成15年11月発行)
「成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明」(中間報告)(平成13~14年度)

 本報告書は,平成13~17年度の5ヵ年の予定で実施されている重点特別研究プロジェクト「成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明」の平成13~14年度,前期2年間の研究成果を取りまとめたものです。
 本課題では,地球環境観測技術衛星(みどり,みどり-II)に搭載されたオゾン層監視センサ「改良型大気周縁赤外分光計(ILAS)」(1996-97年運用)ならびにその後継機ILAS-II(2003-04年運用開始)によって取得されるオゾンならびにオゾン層破壊関連物質に関するデータを高品質で信頼性の高いデータとして提供すること,地上からのオゾンモニタリングデータの提供すること,取得した観測データの解析を通したオゾン層破壊の機構解明を行うこと,数値モデルの開発とその利用を通したオゾン層変動の原因解明と今後のオゾン層の変動予測を行うことを,プロジェクトの目標として研究を行っています。プロジェクトは研究半ばですが,研究成果の一部は既にWMO/UNEPのオゾン科学アセスメントパネルなどに引用されるなど,成果の社会への還元努力も実りつつあります。

(成層圏オゾン層変動研究プロジェクト 今村隆史)

国立環境研究所特別研究報告 SR-56-2003(平成15年11月発行)
「内分泌かく乱化学物質及びダイオキシン類のリスク評価と管理」(中間報告)(平成13~14年度)

 本報告書は平成13年度から17年度の5年間にわたり実施される重点特別研究プロジェクト「内分泌かく乱化学物質及びダイオキシン類のリスク評価と管理」における中間報告として研究結果を加えて取りまとめたものである。
 内分泌かく乱化学物質が原因と考えられる野生生物の異変や人への健康影響において,その汚染の状況を知ると共に,化学物質と影響の因果関係を明らかとすること,また微量の化学物質汚染のリスクを評価し,汚染や悪影響の未然防止,そして,汚染の修復等の対策にいたるまで,総合的な研究アプローチをもって研究を展開することが重要である。
 本研究では,4つの主要な柱として 1)内分泌撹乱化学物質・ダイオキシン類の計測法及び生物検定法の開発,2)内分泌撹乱化学物質・ダイオキシン類の環境動態の解明,3)内分泌撹乱化学物質のヒトの健康及び野生生物に及ぼす影響に関する研究,4)内分泌撹乱化学物質・ダイキシン類の対策技術手法の開発などの研究を行ってきた。
 研究成果の一部は,内分泌撹乱化学物質やダイオキシン汚染の実態を解明するための新たな研究手段として,すでにいくつかの研究機関や調査機関で実際に利用され始めている。今後とも,本研究成果が環境中での内分泌撹乱乱化学物質の対策を進める上で役立つようにしたい。

(環境ホルモン・ダイオキシン研究プロジェクト 森田昌敏)

国立環境研究所特別研究報告 SR-57-2003(平成15年11月発行)
「生物多様性の減少機構の解明と保全」(中間報告)(平成13~14年度)

 この報告は上記プロジェクト(5年計画)の当初2年までの成果をまとめたものである。このプロジェックトの目的は,生物多様性減少のパターン解析とモデルによる演繹的解析によって,その機構の解明を行うとともに,その防止策ならびに適切な生態系管理方策を講じるための定性的,定量的な科学的知見を得ることである。生物多様性減少の多くの原因のなかで,特に生息地の破壊・分断化と侵入生物・遺伝子組換え生物に注目している。主な成果を抜き書きにすると次のとおり。
1. 地域固有性を考慮した生物多様性指数の提案。
2. 土地被覆と生物分布との関係を解析する手法の提案。
3. 侵入生物による在来生物の遺伝子撹乱,随伴生物の同時侵入などの報告。
4. 分子生物学的手法による遺伝子組換え生物の安全性検査手法の開発。
5. 組換え遺伝子の自然界への侵入拡大の調査手法の開発。
6. 樹種による繁殖タイミングの違いが多種共存を持続させることの理論的証明。

(生物多様性研究プロジェクト 椿 宜高)

国立環境研究所特別研究報告 SR-58-2003 (平成15年11月発行)
「東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理」(中間報告)(平成13~14年度)

 近年,中国長江流域及び長江河口域では人口増加に伴う大規模な農業開発,急速な工業化と一極集中化する大規模都市化などにより,流域での環境劣化と経済社会への影響が懸念されている。ここでは自然環境(生態系機能が発現する場)を循環する「水・熱・物質」と生態系機能に焦点を当て,中国科学院地理科学与資源研究所及び水利部長江水利委員会と共同し持続可能な流域管理に関する研究推進を行った。衛星を利用したアジア・太平洋地域の統合的モニタリング網を構築、中国5ヵ所での水・熱・CO2フラックス観測とその数理モデル開発及び植物成長(農業生産)モデルの開発を進め,土壌水分量,純一次生産量,農業生産量等の推定を行った。三峡ダムを組み込んだ長江流域モデルを開発し,洪水防御機能及びダム湖富栄養化予測を行った。また長江由来の流量・負荷量推定を用いて東シナ海の生態系評価を行い,陸域から海域を含む流域圏環境管理の重要性を示した。本研究は,東アジア地域の持続的発展を支える流域圏生態系機能を活用した環境管理技術の基礎となるものである。

(流域圏環境管理研究プロジェクト 渡辺正孝)

国立環境研究所特別研究報告 SR-59-2003(平成15年11月発行)
「大気中微小粒子状物質(PM2.5)・ディーゼル排気粒子(DEP)等の大気中粒子状物質の動態解明と影響評価」(中間報告)(平成13~14年度)

 PM2.5やDEPを中心とした粒子状物質による大気汚染の動態解明と健康影響評価の研究を実施している。本報告書では,二年間の研究成果を中間的にとりまとめた。『排出と環境動態の把握』ではリアルワールドの発生量把握に焦点を当て,シャシーダイナモ実験,車載計測,トンネル・沿道調査などの手法を組み合わせ,主にディーゼル車からの排出特性を調べた。また,都市・広域・沿道における粒子状物質の立体分布をフィールド観測や風洞実験により明らかにした。
 『計測法の検討』では,特に沿道で,その寄与が大きい炭素状物質の測定手法の検討をし,熱分離による測定システムを検討した。『健康影響の評価』では,病態モデル動物を用いた実験などを行い,呼吸器・循環器系に対する影響について検討した。これとともに毒性スクリーニング手法,毒性物質の解析を行った。『曝露量評価』では自動車交通量モデルを開発し,大気汚染濃度分布を推計した。さらに,人の行動を加味した曝露評価モデルを用いることにより,当該地域に居住する人に対する曝露量に及ぼす影響を評価した。

(PM2.5・DEP研究プロジェクト 若松伸司)

国立環境研究所特別研究報告 SR-60-2003(平成15年11月発行)
「循環型社会形成推進・廃棄物管理に関する調査・研究」(中間報告)(平成13~14年度)

 本報告書は,政策対応型調査・研究「循環型社会形成推進・廃棄物管理に関する調査・研究」の平成13~14年度,中期計画前期2年間の研究成果を取りまとめたものである。本研究の目指すところは,物質循環を基調とした環境低負荷型で一次資源利用抑制型の循環型社会を構築することにある。発生から再資源化,処分にいたるまでの様々な局面での廃棄物問題についての対策技術やシステムの開発を重要な研究対象(循環・廃棄物対策技術研究)としている。さらに循環・廃棄物リスク制御研究として,バイオアッセイによるモニタリング手法,有機臭素化合物の挙動,LC/MSのイオン化法の成果が述べられている(循環・廃棄物リスク制御研究)。さらに,循環型社会の実現に向け目指すべき方向を示す羅針盤を整備するための研究を拡充しつつあり,マテリアルフロー分析・産業連関分析を活かした指標研究で資源生産性指標を提案した成果など(循環システム研究)を提供している。

(循環型社会形成推進・廃棄物研究センター 酒井伸一)

国立環境研究所特別研究報告 SR-61-2003(平成15年11月発行)
「化学物質環境リスクに関する調査・研究」(中間報告)(平成13~14年度)

 本報告書は,政策対応型調査・研究「化学物質環境リスクに関する調査・研究」の平成13~14年度の2年間の中間成果を取りまとめたものである。本研究は,複雑化,多様化する化学物質汚染に対し,影響を受けやすいヒトや生物を切り捨てることなく,コストを抑制しながら的確にそのリスクを管理していくために必要なるリスク評価手法の高度化を目的として実施している。曝露評価,健康リスク評価及び生態リスク評価のそれぞれについて政策的な要請に基づく研究課題とリスク管理の将来的な展開を目指した研究課題を実施するとともに,効率的なリスク管理に不可欠となるリスクコミュニケーションについてその手法の検討とデータベースの作成・提供を行っている。曝露評価については,より少ない情報に基づき曝露量を予測する手法や空間的・時間的変動を考慮した曝露評価手法の開発を行っている。健康リスク評価については,感受性を考慮した健康リスク評価手法や大気中の複数の化学物質に曝露された場合のリスク評価手法の開発とバイオアッセイ法の実用化条件の検討を行っている。また,生態リスク評価については,生物種別の毒性試験に基づく生態リスク評価手法を高度化するため,感受性の高い生物種と化学物質種の組み合わせの検索を行うとともに,底質を中心とした生態影響試験法の開発・評価を行っている。

(化学物質環境リスク研究センター 中杉修身)

国立環境研究所研究報告 R-179(CD)-2003(平成16年1月発行) 「環境動態モデル用河道構造データベース」

 本データベースは,河川の流れの構造=河道構造ネットワークをデータ上に実現することにより,化学物質等の汚染物質の流れを例えば全国規模で大規模に解析するような検討を可能にすることを目的として作成された。本データベースでは,国土交通省において作成された国土数値情報他の基礎情報に基づき,河川が流下するネットワーク構造を,河道断片と接合ノードからなるノード・パス構造として汎用データベースの上に構築した。全国の河道は平均河道長5.7km程度に区分された約38,000の河道断片からなるネットワークとして格納されており,また,基礎情報ではネットワークに組み込まれていない湖沼も河道ネットワークの一部として構成した。実際には,人工的な利水・排水などさらに複雑な諸条件を考慮することが今後必要になると考えられるが,まず現在利用可能な情報に基づく本河道構造データを用いて,汚染物質の環境動態の詳細な解析が可能になると考えている。

(環境ホルモン・ダイオキシン研究プロジェクト 鈴木規之)

「環境儀」NO.11 持続可能な交通への道-環境負荷の少ない乗り物の普及をめざして (平成16年1月発行)

 自動車が引き起こす環境問題と言われれば,都市部における大気汚染や騒音がまず思い浮かびます。一方,自動車による化石燃料の大量消費は地球温暖化にも影響を及ぼしていると考えられます。環境儀第11号は自動車の環境問題を解決するために国立環境研究所が考え出した電気自動車ルシオールの開発物語から始まります。ルシオールは従来の乗用車並の性能に仕上がりましたが残念ながら実用化にはいたっていません。しかし,利用目的を限った新しい乗り物と位置づけられれば,実用化も夢ではないようです。自動車の地球温暖化への影響を少なくするためには,燃料消費の押さえ込みが鍵になります。今回の環境儀では,現在普及している自動車と燃料(ガソリン,天然ガス,燃料電池など)を対象としたエネルギー効率の分析についても丁寧に解説されています。こうした研究は環境負荷の少ない乗り物が普及した社会の実現に向けて重要な指針となるはずです。

(「環境儀」第11号ワーキンググループリーダー 須賀伸介)