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国立環境研究所特別研究報告 SR-48-2003(平成15年9月発行)
「環境ホルモンの分解処理要素技術に関する研究」(平成11~14年度)

 ヒトおよび野生生物の生殖系に異常を発生させる環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)で汚染された環境を修復する新技術開発の萌芽を生み出すことを目的に,物理的手法,化学的手法,生物的手法の観点から選び出した個別の対策技術に関する基礎的研究の成果報告である。物理的手法として,ダイオキシン類で高濃度汚染した水を活性炭混和凝集剤で処理する応急対策技術の手法を開発し,その実用性を評価した。化学的手法としては,1.超音波照射で水中に溶存するダイオキシンを分解する方法,2.ダイオキシン類で汚染された土壌に水蒸気態から亜臨界状態の熱水を通して,ダイオキシン類を抽出分解する方法,3.PCBで汚染された底質から有機溶媒抽出で取り出したPCBをカリウムナトリウム合金で室温下,高効率で脱塩素化する方法を開発した。生物的手法としては,環境ホルモンで汚染された土壌で植物を生育することにより汚染を浄化する技術の開発を目指して,1.ベラドンナによる土壌中のPCBならびにダイオキシン類の浄化,2.タバコによるビスフェノールAの浄化機構を明らかにした。

(環境ホルモン・ダイオキシン研究プロジェクト 安原昭夫)

国立環境研究所特別研究報告 SR-49-2003(平成15年9月発行)
「ダイオキシン類の新たな計測手法に関する開発研究」(平成12~14年度)

 本報告書は平成12年度から14年度にかけて実施したダイオキシン類対策高度化研究(ミレニアムプロジェクト)「ダイオキシン類の新たな計測手法に係る開発研究」をとりまとめたものである。ダイオキシン類分析における標準物質は高額であり,そのため本研究では,如何に標準物質の異性体の数を少なくできるかを追求をした。当初は違う物質により代替え品が可能か検討したが,現行の公定法等に準じた標準であるべきとの判断から17成分から4成分で十分可能であるという結果が得られた。また,ダイオキシン類分析のコストを下げるために低分解能GC/MSによる分析法の検討を行い,低分解能GC/MSによる計測法と高分解能GC/MSと比較し,適用可能な試料の種類および範囲,必要な前処理方法等を検討し,必要に応じて装置および計測法を改良した。現行のダイオキシン類の計測法で用いられている煩雑なサンプリング,抽出,多段階のクリーンアップ操作によって夾雑物を除去する前処理の簡略化について,ダイオキシン分析の難しいとされる生体試料によって検討を行った。ダイオキシン類の新たなオンサイト測定法に関する研究で,発生源でのサンプリング,計測を可能とする排ガスのリアルタイムモニタリング手法および移動型ダイオキシン測定手法の開発を行った。これらの研究は,環境中に存在するダイオキシン類対策多種類の有機塩素化合物の健康リスク評価を行うための基礎となり,手助けになると考えられる。

(化学環境研究領域 伊藤裕康)

国立環境研究所特別研究報告 SR-50-2003(平成15年9月発行)
「ダイオキシン類の体内負荷量および生体影響評価に関する研究」(平成12~14年度)

 本報告書は,平成12年度から14年度にかけて実施したダイオキシン類対策高度化研究「ダイオキシン類の体内負荷量および生体影響評価に関する研究」の研究成果をとりまとめたものである。ヒトの曝露量評価,生体負荷量評価では,特に感受性が高いと考えられる胎児,乳児に焦点を当てて行った。羊水,胎脂(胎児の皮膚表面に付着している脂肪分)からもダイオキシンは検出され,妊娠期に胎児はダイオキシン類の曝露を受けていることが示された。また,乳児の最大の曝露源である母乳について,母乳中ダイオキシン濃度と母親の食事との関係を示した。生体影響指標に関する研究では,DNAマイクロアレイを用いた新規ダイオキシン応答遺伝子の検索を行い,2つの細胞でダイオキシンにより変動する遺伝子を同定した。また,従来の血液サンプルに加えて,母乳サンプルにおける生体影響指標測定の可能性について検討した。ダイオキシンに対する感受性の決定要因に関するAhレセプター,薬物代謝酵素CYP1A1についての分子レベルでの検討,ステロイドホルモンのシグナル伝達と細胞周期の関わりについての研究結果を示した。

(環境ホルモン・ダイオキシン研究プロジェクト 米元純三)

国立環境研究所特別研究報告 SR-51-2003(平成15年9月発行)
「干潟等湿地生態系の管理に関する国際共同研究」(平成10~14年度)

 地球の陸と海のエコトーンである干潟生態系は現在,最も開発に曝されている生態系の一つである。開発に対する総合的・科学的・客観的評価がこれまで十分に行われず,一方的な価値観から今でも無限に開発される状況にある。そこで,国立環境研究所では干潟生態系への開発影響を定量的・客観的に,物質循環的機能の観点から評価する手法の検討を行った。本報告書は平成10年度から14年度にかけて実施した特別研究「干潟等湿地生態系の管理に関する国際共同研究」を取りまとめたものである。ここではモデル調査地として全国の13地点の標準的な干潟,東京湾富津干潟,盤洲干潟を例に干潟生態系の構造と機能の把握に関する調査を例に,生物地球化学的な観点から干潟の生態系について述べている。この研究の中で,従来の干潟研究とは異なる視点から新しいアプローチがなされた。干潟の環境と生態系を理解する上で日本全国の主な干潟13地点での比較研究と東京湾の干潟をケーススタディとして日本の干潟生態系の理解と保全が図られ,また環境アセスメントに際しての有力な生態系評価手法の一つになることを信じている。

(生物圏環境研究領域 野原精一)

国立環境研究所特別研究報告 SR-52-2003(平成15年9月発行)
「大気汚染・温暖化関連物質監視のためのフーリエ変換赤外分光計測技術に関する研究」(平成12~14年度)

 本報告書は平成12年度から14年度の3年間にかけて実施した革新的環境監視計測技術先導研究の成果をまとめたものである。本研究では,国立環境研究所地球温暖化研究棟3階に設けられた大気微量成分スペクトル観測室内および屋上に設置された,太陽追尾装置と高分解能フーリエ変換赤外分光計(FTIR)から構成される「衛星センサー分光パラメータ評価実験システム」を用いて,太陽あるいは人工光源を用いてCO2,CO,CH4,N2Oの鉛直分布あるいは地上付近の平均濃度を測定する技術を開発したものである。特にCO2に関しては,地上から大気上端までの平均濃度あるいは高度1kmを中心とする対流圏下部の平均濃度を1%より良い精度で測定する見通しが得られた。本研究の成果は,日本や米国で計画されている温室効果ガスの衛星観測に対する検証にとっても重要な技術を提供するものである。

(大気圏環境研究領域 中根英昭)

国立環境研究所特別研究報告 SR-53-2003(平成15年9月発行)
「海域の油汚染に対する環境修復のためのバイオレメディエーション技術と生態系影響評価手法の開発」(平成11~14年度)

 本報告書は,平成9年に日本海で発生したナホトカ号タンカー事故による重油流出の後を受けて平成10年度に環境修復技術開発研究として開始され,平成13年4月の当研究所の独立行政法人化に伴い特別研究として継承され,平成14年度まで実施された研究成果をとりまとめたものである。主な実施研究内容として,(1)沿岸部における石油バイオレメディエーションの小規模現場試験と影響評価,(2)石油バイオレメディエーションに伴う微生物群集構造変化の解析,(3)底質を含む簡易モデル生態系(マイクロコズム)による石油分解と生態系影響評価から構成されており,特に実海域における現場実験は我が国でも例が少なく,より実際に近い貴重な知見が得られたものと考えている。これらの成果は,今後,ガイドラインあるいはガイダンス等の環境省による何らかの指針を通じて活用され,今後の環境技術政策に有効な知見を提供するものと考えている。

(流域圏環境管理研究プロジェクト 牧 秀明)

国立環境研究所研究報告 R-178-2003(平成15年9月発行)
「交差点周辺の大気汚染濃度分布に関する風洞実験」

 風洞実験では,実市街地における風向・風速の大きな変動や交通量の変化を現実のとおりに再現することはできない。むしろ風洞実験は,これらの不規則に変化する量を固定し,現象をより単純に模擬する。こうすることによって,たくさんある要因の影響をひとつひとつ切り分けて調べ,現象を深く理解することができる。

 ここでは,国立環境研究所の大気拡散風洞に実在交差点周辺市街地の模型を設置して行った拡散実験の結果を報告する。後背地を含めた交差点周辺の濃度分布を詳細に測定し,さらに,高架道路に覆蓋された幹線道路(ストリートキャニオン)内部の気流と沿道大気汚染物質の濃度分布を調べた。

 実験によって得られた風速と濃度分布データは,数値シミュレーションの検証にも役立つと考える。

(PM2.5・DEP研究プロジェクト 上原 清)

「環境儀」No.10 オゾン層変動の機構解明 宇宙から探る 地球の大気を探る(平成15年10月発行)

 成層圏オゾン層変動は1980年代に南極オゾンホールが発見されてから社会的にも大きな関心を集めています。国立環境研究所の「衛星観測プロジェクト」では,人工衛星を使ってオゾン層変動の機構を明らかにするための研究に取り組んできました。本号では,人工衛星のデータからどのようにして成層圏オゾン量を測るのか,オゾン破壊に重要な役割を果たす極成層圏雲とはどのようなものかなどを分かりやすく解説するとともに,北極上空におけるオゾン破壊速度の決定など,プロジェクトの重要な成果を紹介しています。

(「環境儀」第10号ワーキンググループリーダー 横内陽子)