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平成13年度独立行政法人国立環境研究所予算案の概要について

牛場 雅己

 平成13年度の国立環境研究所予算は,平成12年12月24日に閣議決定された政府案で総額約95.5億円(運営費交付金92.5億円,施設整備補助金3億円)とされています。これは前年度当初予算に比べて約3.9億円,率にして4.2%の伸びです。

 平成13年度の予算案には,このような前年度に対する増減という数字上の比較の次元を超えた,その性格に大きな変化があります。表面的に言えば,これまでの環境省付属機関としての研究所の運営のための予算から,行政とは独立した組織である独立行政法人の運営のための予算になったということです。

 ご存じの通り,独立行政法人は,より質の高い行政サービスを提供するために,運営面を自己責任化して,その業績について厳しい評価を受けることを前提に,柔軟な仕事のやり方が認められています。これら運営上の特徴の一つとして,予算の要求の仕方,使い方にも大きな違いが現れます。

 具体的には,これまでの予算はある研究課題について,旅費,備品,消耗品,雑役務費など,細かに各々の必要性と所要額を明らかにした上で要求を行い,それに対して,例えば個々の課題ごとにその中身についてまで査定を受けることなどにより,使い道を示される形で予算の交付を受けてきました。

 それが,新たな予算では,例えば各研究課題ごとに予算額を示されるのではなく,人件費や光熱水量なども含め,一切合切,諸々の研究所総体の運営に必要な経費は総額92.5億円である,という趣旨で,環境省より交付金の交付を受けるということになります。これまでと違って各研究課題ごとに予算案が決められていないため,基本的にその使い方に制限はありません。ただし,独立行政法人制度の下では,業務運営の効率化や,国民に対して提供するサービス(研究のアウトプット等)の質の向上,財務内容の改善等の観点から,環境大臣から研究所が達成すべき目標「中期目標(H13~17年度)」が示されます。それを達成するための「中期計画」を研究所自ら策定し大臣の認可を受け,これに基づき効率的かつ機動的に具体的な環境研究に取り組んでいくことになります。言い換えれば,中期計画に従って,予算を執行していくことになるわけです。

 平成14年度以降の中期目標期間の予算要求は,平成13年度当初に認可される予定の中期計画に沿って,運営費交付金等の予算要求を行うことになるはずですが,平成13年度予算要求は,独立行政法人化への移行期ということもあり,本来の流れからすると順序が逆転していると言えます。したがって,予算案が固まったといっても,内訳のない総額として示されたに過ぎません。我が国唯一の総合的な環境研究機関として,今後とも,現下の環境問題の解明や対応のための研究,環境政策の支援のための研究,さらに今後生じ得る問題の検出や未然防止あるいは今後の環境研究の基盤となるような研究等を推進することに変わりはありませんが,次年度,具体的に何を行うかは,中期計画が策定される4月以降に明らかにすることができます。ただ,平成13年度予算案には,今後,新たに総合的に取り組む研究として,日本新生特別枠として認められた,循環型社会形成推進・廃棄物研究及び化学物質環境リスク研究を含む政策対応型環境科学研究推進事業や,つくばWAN(Wide Area Network)の構築という省庁連携事業も含まれています。

 いずれにしても,環境大臣が定める中期目標を達成するため,平成13年度は,独立行政法人への円滑な移行を確保しつつ,効率的で質の高い業務運営に向けた組織・体制の整備等を進めるとともに,中期計画に基づき各種研究に着手し,以降,地球温暖化,廃棄物・リサイクル,化学物質など幅広い分野でプロジェクト研究等を推進する予定です。

 参考までに以下に日本新生特別枠として認められた事項について,その概要を示します。

●政策対応型環境科学研究推進事業1,000百万円

1.目的

 新たな世紀に循環型経済社会を構築・定着させるとともに,国民にとって安全・安心な暮らしを確保するため,強力に環境行政を推進する必要があり,これらを科学的な知見から支援していくため,政策対応型の循環型社会形成推進・廃棄物研究及び化学物質環境リスク研究に総合的に取り組むために必要な研究体制を整備し,当該研究を強力に推進する。

2.事業概要

(1)循環型社会形成推進・廃棄物研究の推進
 循環型社会の形成及び廃棄物の適正な処理の推進に資するため,(1)循環資源のリサイクル推進のための利用促進システムや資源化技術及び新輸送システムの開発等,(2)焼却施設及び最終処分場の低コスト・長寿命化及び最終処分場の再生活用技術の開発,並びに(3)新環境基本計画を受けての地域レベルでの取り組みを環境・経済両面より診断し,支援するシステムの構築に関する研究を推進する。

(2)化学物質環境リスク研究の推進
 化学物質環境リスク管理政策を支援するため,(1) 化学物質の環境リスク評価の高精度・高度化技術の開発,(2)包括的毒性遺伝情報(トキシコジェノミクス)を利用した予防的健康リスク評価手法の開発に関する研究を推進する。

●つくばWANの構築 50百万円

1.目的

 筑波研究学園都市は建設25年を経ており,その研究交流機能のIT化が近年の急速な技術進歩に比べて著しく遅れをとっているため,スーパーコンピュータや大規模データベースを高度に活用し,地球環境研究における膨大なデータの送受信のほか,画像データ等のリアルタイム伝送など,環境研究分野を含むネットワーク需要に対応した,各種共同研究に必要な「つくばWAN」を関係機関連携の下で構築する。

2.事業概要

 筑波研究学園都市内において光ファイバーケーブルにより各機関のスパコンを結び,10ギガビット級の「つくばWAN 」を構築し,高度な高速ネットワーク化を図る。平成13年度においては調査設計,施設設備整備を進め,平成14年度以降運営開始予定(関係機関:環境省,文部科学省,経済産業省,総務省,筑波大学,図書館情報大学,NTTアクセスサービスシステム研究所)。

(うしば まさき,研究企画官)