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科学技術庁関連予算による研究 (国立環境研究所における平成11年度の実施状況を中心として)

広木 幹也

 国立環境研究所(国環研)では環境庁が所管する予算以外にも多くの研究資金により研究活動が進められている。その主なものは,科学技術庁による科学技術振興調整費,国立機関原子力試験研究費および海洋開発及地球科学技術調査研究促進費などである。

 科学技術振興調整費は,各省庁,大学,民間などの研究体制の枠を超えて研究開発を進めることを主たる目的として創設された制度で,さらにその中には,研究目的,研究分野などに応じた様々な枠組みの制度が設けられている。国環研にかかわるものはこのうち,総合研究,生活・社会基盤研究,国際共同研究,知的基盤整備,流動促進研究および重点基礎研究である。総合研究は,重要な研究テーマについて産学官の複数の研究期間の連携の下に総合的な研究開発を行うことを目的とした制度で,国環研では6課題(国環研分92百万円,ただし研究委託費は含まず)に参加した(11年度,以下同じ)。生活・社会基盤研究(生活者ニーズ対応研究)は,生活の質の向上に資することを目的として具体的な応用を目指した基盤的研究制度であり,国環研では5課題(234百万円)に参加した。国際共同研究は海外との科学技術協力を強化するための制度で,将来の国際共同研究の芽の育成から多国間での国際共同研究の実施に至るまで,その研究協力の程度により4つの制度((1)交流育成,(2)国際ワークショップ,(3)二国間型,(4)多国間型)が設けられており,国環研ではそれぞれ1,2,4,1課題(計66百万円)を実施した。知的基盤整備は,データベースなど研究者の研究開発活動を支える知的基盤を整備することを目的とした制度で,国環研では1課題(6百万円)に参加した。流動促進研究は,国立試験研究機関において任期付研究員が限られた任期中に,特に密度の高い研究活動を効果的に行おうとするもので,1課題(14百万円)を実施した。また,重点基礎研究は,自然科学系の国立試験研究機関において革新的技術シーズの創出を図るための基礎的研究を進めるもので,国環研では8課題(44百万円)を実施した。一方,原子力試験研究費は,各省庁所管の試験研究機関における原子力試験研究費を科学技術庁に一括計上するもので,国環研では環境対策,先端的基盤研究などにかかわる研究分野で5課題(56百万円)を実施した。また,海洋開発及地球科学技術調査研究促進費は地球環境変動の解明・監視を目的とするもので,これらの研究には長期観測が不可欠であることから10年以上継続的に実施されてきている課題もある。国環研では2課題に参加した(表1)。

 科学技術庁関連予算による研究としては,上記の科学技術庁からの移し替え予算によるもののほかに科学技術振興事業団による各種事業がある。戦略的基礎研究推進事業では,特定の研究領域において研究課題を公募し,大型プロジェクトを実施する。研究領域には「環境低負荷型の社会システム」,「内分泌撹乱物質」などが含まれており,当研究所でも計11課題に参加した。また,高速ネットワーク等の情報基盤を利用するとともにシミュレーション等の計算科学技術の活用あるいは大容量データ転送・解析を行う研究開発を推進することを目的とした計算科学技術活用型特定研究開発推進事業には,国環研では4課題(うち2課題は単年度の短期集中型)に参加した(表2)。

 特殊法人などの競争的資金による公募型研究としては,科学技術振興事業団によるもののほか,新エネルギー・産業技術総合開発機構(通産省所管),生物系特定産業技術研究推進機構(農水省所管)や医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(厚生省所管)等で実施しているものもある。13年度に国立試験研究機関の多くが独立行政法人化した後,これらの科学技術庁関連の研究予算および特殊法人による事業がどのように運営されるか現時点では不明な点は多いが,今後ともこれらの競争的資金は益々拡充の方向にあり,国環研としてもこれらを活用して研究資金の充実を図る必要があろう。

(ひろき みきや,研究企画官)