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これからの環境生物研究の展開にむけたメッセージ

 本年7月1日付けで生物圏環境部長に就任し,この原稿を執筆している時点でまだ1カ月と10日を過ぎたばかりである。今までは同部の環境微生物研究室長として主に環境微生物の展開だけを考えていればよかったものが,今度は生物全般にわたって広い視野をもたねばならなくなり,その責任の重さに身がひきしまる思いである。

 生物圏環境部には4研究室が存在するが,それぞれ環境保全に係わる重要な基盤研究を遂行しているだけでなく,地域環境あるいは地球環境保全に係わるプロジェクト研究にも積極的に関与し,科学技術振興調整費の研究も推進してきた。誰にも後ろ指をさされることなく,一生懸命研究業務を営んできたと胸をはって言うことができるだろう。また,地域環境研究グループや地球環境研究グループに所属している生物系の研究チームあるいは研究者すべてがプロジェクト研究の推進を責任をもって果たしてきている。部長という立場からあらためてその姿を見て,組織見直し以降の厳しい環境の中でよくも頑張ってきたものだと頭の下がる思いである。部長として行うことはただ一つ,部員及びプロジェクト部門の生物系研究者の研究のより一層の発展に,微力ながらも最善を尽くすことである。

 さて,言うことは簡単にできても,実行となると簡単にはいかないのが世間である。私の姿勢を実行力のあるものとするため,少々かたい話もしなくてはいけないだろう。生物系の研究者が本当によく研究を推進しているのは間違いないとしても,しっかりした環境研究としての位置づけ,あるいは研究の方向づけがなされていたかとなると,正直いって胸をはってyesとは言いにくい。個々の研究者あるいは研究室のベクトルがそれぞれ別のところを向いていて,部及び系としてのまとまりや研究室間及び研究者間の情報交換,意志疎通が希薄だったのではないだろうか。省庁再編が現実のものとなる状況で,研究をとりまく環境は一層厳しくなることは避けられない。このような時期にこそ個々の研究者が結集し,互いに協力し,助け合い,活発な議論を行い,互いの理解を深め,来るべき激動の時代にもゆるぎのない中長期的な環境生物研究のマスタープランを作っていく必要があるのではないだろうか。勿論,問題はこれをいかに進め,実現していくかであり,その道筋をつくるのが部長の最大の仕事であると信ずる。他の仕事は部長の業務として淡々と行えばよいと思っており,マイクロマネージメントは私の性にはあわない。

 生物圏環境部及びプロジェクト部門の生物系研究者を集め,セミナーを行い,互いの研究内容の理解を深めること,生物系としてこれからの環境研究をいかに展望するかについて,環境庁の関連部局,特に自然保護局との意見交換を行いながら検討していくことは重要である。しかし,これだけでは長続きせず,いつのまにか自然消滅してしまう。そのような経験はいやになるくらいしてきた。皆が大きな関心を持続して持つことができるような「何か」を獲得する必要がある。このことは部長に就任する前から考え,悩んでいたことであり,その「何か」は,共通の目的をもって皆が参加できるプロジェクト研究を準備することであると信じてもいた。

 5月に当時生物圏環境部長を兼任していた大井副所長の了解を得て,重点国際共同研究に「干潟等湿地生態系の管理に関する国際共同研究」を提案し,さらに7月には環境庁環境研究技術課の平成9年度未来環境創造型基礎研究推進費に「亜熱帯島嶼生態系保全手法の開発に関する基礎的研究」を野原精一生態機構研究室長が代表となって提案した。幸い,前者は大蔵省への環境庁予算要求として認められ,後者は採択となった。これで,生物系研究者のみならず関連する他の系の研究者を結集し,共通の目的の下で共同研究を実施する中で,生態系保全,生物多様性,自然保護研究について論議を深め,中長期的な環境生物研究のマスタープラン作りを行うことができると信ずる。ここでは排除の論理はとらない。多くの研究者の参加を切望する。所外の研究者の協力,参画も大歓迎である。大きな夢とロマンをもった環境生物研究を展開するために。

(わたなべ まこと,生物圏環境部長)

執筆者プロフィール:

8月末に愛犬(6才)がフィラリアで死亡。少々落込んでいます。