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後藤 彌彦

 7月1日付けで環境研修センターの所長を拝命しました。所沢,つくばと挨拶まわりをしているうちに昔のことを思い出しました。

 環境庁に入ったのは昭和47年。環境庁設置法上規定はあったものの国立公害研究所も公害研修所もまだ存在していませんでした。したがって,初任者研修は,合同庁舎内の会議室,合宿でなかったのが残念でした。官房総務課で法令審査の見習いをしていたとき,設置法上47年度中に発足することとなっていた研修所を48年3月1日から発足させることになり,その政令と「公害研修所規則」の制定のお手伝いをしました。研修所は自然保護担当職員の研修も行うにもかかわらず,「公害」研修所という名称になっているのは,公害行政担当職員の迅速な養成と公害行政の全国平均的な施行を行うことを第一義的な任務と考えたためであることを知ったこと,また,研修計画,服務などの規定を含んだことから,組織規則ではなく,単に規則という名称になったこと,建物が完成せず,庁舎内の会議室で看板をあげたことなどが思い出されます。その一年後,今度は国公研の発足を迎えます。当時環境庁の研究調整課にあった公害情報室のメンバーと「国立公害研究所組織規則」の制定に当たり,2部2課体制で発足するものの,大規模な研究所が構想されていることを知りました。

 月日は流れ,平成2年の環境庁における地球環境対策を念頭においた体制作りの中で,研修所(所沢)と国公研(つくば)は,国立環境研究所という一つの大きな傘の中で一緒になりました。公害研修所規則は,2つに分割され,組織部分は国立環境研究所組織規則に吸収され,研修計画等は国立環境研究所研修規則へと大きく変化しました。

 それぞれの20周年という節目の行事には,不思議に縁があり,参列できました。センターでは永く研修講師を務められた甲斐荘さん(臭気関係)らとお話ができ,つくばではテントの下で天気の心配をしましたが,共通して印象を受けたのは,どちらも緑濃く,また,新しい施設が増築されたことにより手狭になったことです。

 日頃静かな所沢ですが窓の外では建設作業の音がしています。地球環境時代につくばはいち早く対応し,着々と成果を挙げていますが,所沢は自治体職員の養成を目的とするという性格上対応が遅れ気味でした。ようやく,補正予算を得て国際環境協力に携わる専門家の養成を行うための研修棟の新設と宿泊棟の増設の工事に取りかかっています。近年,開発途上国から我が国に対して環境分野の専門家の派遣要請が急増していますが,これに携わる専門家を体系的に養成することを目的とした研修は行われていませんでした。このため,公害対策に豊富な経験を有する人材を多数持ちながらすぐに派遣できる専門家に不足を生じたり,派遣に際しての事前の準備が不十分のため限られた期間で効果的な協力の成果を発揮できないという問題が生じてきていました。このようなことから,専門家養成研修,派遣前研修等いくつかの研修コースを新設する予定であり,そのための施設整備を行っているわけです。これが完成の暁には,研修センターは,公害,自然保護に加え国際環境協力という第3の柱が加わることになり,名実ともに「環境」研修センターといえるようになります。これに伴い,今後さらにつくばの協力を必要とする事柄が増えることが予想されます。つくばの勤務経験のあった久野前所長に劣らないように連携に努めたいと思います。

(ごとう やひこ,環境研修センター所長)

執筆者プロフィール:

昭和47年環境庁入庁,法学部卒なので研究のことは易しく解説してください。