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就任のご挨拶-二段目ロケットへの点火-

安岡 善文

 5月1日付けをもちまして地球環境研究センター総括研究管理官を拝命しました。前任の西岡総括研究管理官(現地球環境研究グループ統括研究官)が幅広い見識とバイタリティで突き進んでこられた後を受け継ぐということで非常に緊張しています。血圧がだいぶ上がっているようです。

 1990年10月に発足した地球環境研究センター(CGER)も今年で7年目を迎えようとしています。発足以来,地球環境研究の企画調整ならびに個別研究の総合化,データベース構築をはじめとする地球環境研究の支援,さらに,地球環境のモニタリングの3本柱を軸に仕事を展開してきました。ゼロからの出発であった CGER の名前を,国内はもちろんのこと国際的にも知られるようにまで発展させてきたということで,立ち上げの時期として十分な成果が得られたのではないでしょうか。一段目の強力ロケットでここまで上昇してきた今,これからセンターの仕事をどう発展させていくか?これが私に課せられた仕事です。

 二段目のロケットに点火して進む方向として,地球環境研究における分野横断的な基盤システム(モニタリング,情報システム,総合化モデリング)の研究整備を重点テーマとして挙げたいと思います。これは基本的に前述の3本の柱を推進することと矛盾するものではありません。モニタリング,情報システム,モデリングは,地球温暖化,オゾン層の破壊,熱帯林の減少等の個別分野でのプロセス研究を縦軸としたとき,横軸,すなわち,分野横断的な基盤システムを構成するものといえます。地球環境問題が広域的,長期的でありかつ陸域,大気域,水域の自然システムと社会・経済システムが複雑にからんだものであることを考えるとき,目的にあったデータを収集し,蓄積,処理するためのモニタリングシステムや情報システムを構築することは,最優先課題であると思います。さらに,個別分野におけるモデルを総合化し,まとめていくことも分野横断的であり地球環境研究を推進していくうえで不可欠な課題です。もちろん,いずれの3本柱もこれを実行していくことは簡単ではありません。分野横断的なシステムを作るためには,当然のことながら一研究機関の枠,さらには省庁の枠を越えた視点,すなわちオールジャパンの視点が必要となります。十分な研究と,研究に裏打ちされた実行がなければ国内外の研究者はだれも協力してくれません。努力したいと思います。

 さて,従来の基本路線を受け継ぐにしても,第二ロケットへの点火に際して,この6年間の外的状況の変化に応じた方向の修正が必要となっていることは事実です。どのような変化があったでしょうか。ブラジルの UNCED では“持続的開発”という方針が打ち出されました。また国内では,環境基本法が制定され,それに基づいて“循環と共生”という基本的考え方が打ち出されました。国際的にも国内的にも地球環境研究を推進していく方向性が示されたと思います。

 さらに大きな外的変化として,地球環境研究分野における競争がいろいろな点で増したということが挙げられます。地球や環境という名前を組織名に冠しているからというだけで,その分野で先陣をきり,指導的立場を維持できるほど甘くはありません。地球環境研究センターの使命は,上記の3本柱を軸に,オールジャパンの立場で,地球環境問題の解決のために今何が重要かを考え,その方向性を示すことですが,さらにその中で,自分自身がどこを重点化するか,何を加えて何を削るかを考える必要があります。研究者層がそれほど厚くない日本において,仕事の重複を避け,役割分担を明確にしていくことは必要です。少し時間をかけて考えたいと思います。

 “CGER があの時あれをやってくれたから地球は滅びなかった”,かなりオーバーですが,後世の人々からこう言われるような仕事をしたいと思います。宜しくご指導をお願いいたします。

(やすおか よしふみ,地球環境研究センター総括研究管理官)

執筆者プロフィール:

昭和50年国立公害研究所入所(環境情報部)。以来,環境情報の処理・解析,特にリモートセンシングデータの研究に従事。本年4月まで社会環境システム部情報解析研究室長。