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国立環境研究所特別研究報告(SR-19-'95)
「水環境における化学物質の長期暴露による相乗的生態系影響に関する研究」(平成元年〜5年度)(平成7年3月発行)

 化学物質の生態影響評価のため様々な生物試験が実施されているが,急性毒性試験や慢性影響試験にかかわらず,特定の化学物質を決まった濃度で水生生物に暴露している。しかし,現実の化学物質の生態影響は低濃度の様々な化学物質の複合汚染が関与し,それらの濃度変動も激しい。また,生態系は様々な生物の相互作用から成り立っているため,生物間相互関係を介した化学物質の間接的な影響評価も重要である。本研究はこのようなテーマに関し調査・研究を実施した。1)河川生態系に対する農薬複合汚染の影響を,感受性の高い試験生物を用いたバイオモニタリング,野外実験,生物調査などから評価した。その結果,農薬類の潜在的な生態影響の存在とそれらの原因物質などが明らかとなった。2)生物間相互作用に基づく化学物質の生態影響に関しては,主として湖沼の実験生態系や,カイロモンを介した生物間の相互作用,藻類の耐性系統の出現などの面から,本報告書が示すように多くの事柄が明らかにされた。

(地域環境研究グループ 畠山成久)

国立環境研究所研究報告 (R-134-'95)「宮床湿原の生態系構造」(平成7年3月発行)

 尾瀬ヶ原の北側の福島県南会津地方には,数haから数十haの小規模の湿原が点在している。その一つ,宮床湿原は,人の訪れることも少ない面積6.5haの小さな泥炭地湿原である。しかしここでの多面的な研究から,湿原生態系の成り立ち,変遷についての多くの情報が得られた。本報告書の内容は,湿原の環境,動植物相と生物問相互作用,水生生物の多様性,そして土壌の4つに大別でき,13編の報文が納められている。湿原には欠かせない高等植物の研究を含んでいるのは勿論であるが,本書の特色は,湿原を水と多様な生物で構成される「生態系」として扱ったことにある。また連続観測や定期調査による地下水の挙動の解明や,藻類やユスリカ類など微小な生物の多様性の解明など,これまでの混原研究で見過ごされた点についても補っている。なお本報告書は,平成3年度から進められている特別研究「湿原の環境変化に伴う生物群集の変遷と生態系の安定化維持機構に関する研究」の成果の一部をまとめたものである。

(生物圏環境部 岩熊敏夫)