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共同実験2棟(仮称)の建築について

その他の報告

立川 裕隆

 平成5年度の補正予算として国立環境研究所に約68億円(うち15億円は政府案段階。ただし,施工庁費等を除く。)が計上された。この補正予算のうち,新たに増築する共同実験2棟について紹介する。

 この実験棟は,大山ホールなどが入っている研究本館IIの北側に鉄筋コンクリート4階建て,総床面積約4,000m2の実験棟を建築するものである。その主要設備は以下の通りである。
(1) 有害化学物質関係実験室 … 有害化学物質の超微量分析,環境中での分解性等評価,動物あるいは微生物を用いた有害性評価等に関する研究を行う実験室であり,実験室を陰圧にするなど,外部への漏洩に万全を期した管理体制を講じることとしている。
(2) エコオフィス … 電気,冷暖房について,極力太陽光を利用した研究室等。
(3) 加速器質量分析設備 … 測定対象元素をイオン化し,加速器で高エネルギーに加速して質量分析したのち計測する設備。妨害となる分子イオンや,同じ質量数を持つ他の元素の影響を完全に除くことができ,微量同位体を極めて高感度で正確に分析できる。有害化学物質の起源の探索,環境試料の年代決定,環境中の物質動態の研究等での成果が期待されている。
(4) タンデムMS/MS … 質量分析計(MS計)を直列(タンデム)に2台接続した装置。有害化学物質が生体内に入り,遺伝子等をどのように傷つけたかなど,有害化学物質による生体影響に関する研究等への利用を行う予定である。
(5) フーリエ変換質量分析設備 … イオン化した化学物質を強い磁場の中に入れると質量/電荷比に応じた周波数で回転することが知られている。この周波数成分をフーリエ変換で求めることにより,存在する化学物質の質量数を極めて高感度かつ精度良く求める設備。環境中化学物質の極微量測定とその起源の探求,環境中,特に大気中での化学物質の動態,反応過程や反応生成物の測定等での成果が期待されている。
(6) ミリ波分光観測設備 … 日本上空の成層圏オゾン濃度については,これまで地上からオゾンレーザーレーダーによって観測してきたが,このレーダーでは,上空40km付近までしか観測することができなかった。このため,ミリ波帯の電波を観測する設備を設置し,より超高層のオゾン層の状況を観測する。
(7) ILAS/RISデータ処理・運用システム … 平成7年度に打ち上げられる地球観測プラットフォーム技術衛星ADEOSに搭載されるセンサーILAS及びRISから送信されてくる膨大なデータについて,処理・解析することにより,オゾン層の破壊状況等,高層大気環境を監視・観測するためのシステム。
(8) NOAA受信施設 … 米国海洋大気庁の気象衛星NOAAは,地球上の同じ地点の上空に1日2回飛行しており,地上の状況を頻度高く観測することができる。今回の補正予算により,当研究所等にNOAA受信施設を整備し,受信画像を重ね合わせて処理することにより,東南アジア地域全域の熱帯林の減少等の状況を監視する。
(9) GRID関係設備 … 地球環境問題に関するデータは多種大量であり,研究推進や政策決定のためには,信頼できるデータを整理する必要がある。国立環境研究所地球環境研究センターは,国連環境計画(UNEP,United Nations Environment Programme)の地球資源情報データベース(GRID, Global Resource Information Database)事業の協力センターとなっているが,今回の補正予算により,社会・経済オリジナルデータの作成や大量のデータを保管する設備を設置する。

(たちかわ ひろたか,研究企画官)