ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

オゾン層観測衛星センサーILAS開発の現状報告

研究ノート

鈴木 睦

 ILAS(Improved Limb Atmospheric Spectrometer)は1996年2月に打ち上げられる地球観測衛星ADEOSに搭載される環境庁の2つの大気センサーの内,太陽掩蔽法を原理とする極域成層圏オゾンを監視・研究するものである。既に各種技術的試験のためEM(エンジニアリングモデル)・STM(熱構造モデル)の機器単体での試験・性能評価が終了し,現在は衛星システム試験がNASDA筑波宇宙センター内で行われている。同時に1994年8月の納入を目指してPFM(フライトモデル)の製作が進行中である。

 ILASは宇宙科学研究所の科学衛星「おおぞら」(1984年)に搭載されたLAS(Limb Atmospheric infrared Spectrometer)を発展させた観測機器であり,科学衛星に準じた開発が環境研および内外の多数の研究者の協力・参加のもとに進められている。環境研はサイエンスチーム(リーダー:衛星観測研究チーム,笹野泰弘)の中核として研究プロジェクト推進・センサー仕様決定・センサー開発の指導・データ処理系開発等を分担している。

 ILASプロジェクトが内外の多数の中層大気の代表的研究者の参加を得ることとなった背景には,同時期に国際的に大気衛星観測が不足すると共にILASがオゾンホールの発見以降に開発された最新のセンサーであり,オゾン測定・硝酸および二酸化窒素等の窒素系化学種測定・気温測定等で同世代の高度(=高価)なセンサーに性能的に劣らないと期待されるためでもある。

 大気現象は11年周期の太陽活動に影響されるなど長期観測を要する,またオゾンホール等の原因である大気中総塩素濃度の極大が2000年頃とされ(図),ILAS後継機のADEOS−2衛星(1999年)等への継続的搭載も必要であろう。

(すずき まこと,地球環境研究グループ衛星観測研究チーム)

図  各種モデルによる対流圏および成層圏の塩素原子レベルの長期予測