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青木 陽二

 視覚公害や聴覚公害が世の中で言われるようになって久しい。多くは人間の感性に基づくものであるので、人がどのように感じているかを測ることが必要である。人間の外界に対する窓である感覚器官に関しては生理学や心理学を中心に古くから調べられていた。

 しかしながらこれらの研究では感覚器官の基礎的な弁別能力を調べるにとどまっていた。結果の精度を上げるために室内で実験が繰り返され、細胞の状態に至るまでその仕組みは分かりつつある。これらの研究成果によって現在問題となっている公害が解明できるかどうかは室内で行われた実験結果の外部空間における再現性と、大脳による高度な情報処理機構の解明による。

 本研究では、実験室ではなく一般の人が接する空間における人々の感覚と、その場における物理化学的な刺激の量との関連を求めるものである。室内とは違ってフィールドでは色々な環境条件の変化が同時に発生する。このため多くの環境項目を測定する必要が生じてきた。この度の経常研究では大気に関連する現象の2、3の測定項目にテーマを絞り、他の変量は観察によって補うことにした。

 測定のために風速0.01m/s、気温0.01度、湿度0.01%の精度まで、1秒間隔で測定できる機器を整備した。また照度は0.1〜100万ルクスまで測定できる機器を購入した。騒音計は室内用のもので代用することにした。

 四季折々の水辺や山間、田園地帯と色々な場所で測定を試みた。複数の被験者による心理的計測は都合でできなかったので物理化学的な刺激と心理的な評価との相関を検定することはできなかった。よってその場に対する印象評価は私の個人的な体験・観察結果である。

 音に関しては、研究所の構内では65dBでそばを通る車の音に驚かされた。また、洞峰公園から赤塚公園への遊歩道では50dBで通る自転車の音も、そして45dBで鳴く小鳥の声も驚くほど大きく感じられた。

 参考にチョロチョロという流れは音源から2mで50dB、ザアザアという水の流れは70dBもあるが驚くような感じはなかった。

 風に関しては0.1m/sの風を感じることができた。風があるなという感覚は0.3m/sで十分であった(気温5.6度のとき)。

 風が冷たく感じられるのは、2月の山間の測定では0.48度(風速0.57m/s)、5月には19.6度(風速1m/s)であった。寒暑感覚には気温、湿度、気流やふく射が影響されると言われているが、平均気温から見ると幅広い範囲で冷たさを感じることができた。

 明るすぎるのは夏の山間で8万ルクスから、暗いと感ずるのは秋の平野で1300ルクスからだった。

 さて写真のような場所において下記のデータからその場の状況が分かりますか?

(あおき ようじ、社会環境システム部環境計画研究室)

写真  1992年2月1日(土)8:30の国立環境研究所実験池の水辺の雪景色