ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

国立環境研究所特別研究報告(SR-6-'91)
「土壌及び地下水圏における有害化学物質の挙動に関する研究」昭和60年度〜平成元年度(平成3年3月発行)

 土壌と地下水は、それぞれ食糧生産の場並びに飲料・潅漑用水源として非常に重要な環境であるが、近年これらが有害物質(揮発性有機塩素化合物や重金属など)により汚染され、重大な社会・環境問題となっている。この報告書は、このような土壌・地下水汚染の機構を解明し、汚染の防止対策を提案する目的で、昭和60年度から実施してきた特別研究の最終報告である。報告書では、土壌表層に負荷された有害物質が浅層・深層土壌層から地下水層へと移行する機構とその過程で起こる有害物質の土壌への吸・脱着反応や生分解反応、並びに有害物質が陸上植物や土壌生物に与える影響などについて検討している。また、揮発性有機塩素化合物に関しては、汚染機構の解明、汚染源特定手法の開発や分解微生物の検索なども行い報告している。

(水土壌圏環境部 高松武次郎)

国立環境研究所特別研究報告(SR-7-'91)
「雲物理過程を伴う列島規模大気汚染に関する研究」昭和61年度〜平成元年度(平成3年3月発行)

 この報告書では長距離輸送中に発現する種々の形態の大気汚染、すなわち都市型NO2汚染、光化学オキシダント汚染、二次粒子汚染、湿性大気汚染、酸性雨等の生成機構に関する研究成果を示した。

 陸上を渡る大気汚染長距離輸送機構としては種々の局地風が合体して形成される大規模風による長距離輸送機構が本研究によって初めて明らかにされた。また数値モデルを用いて長距離輸送中に起こる種々の大気汚染を統一的に予測する手法を確立した。このモデルを用いて窒素系及び硫黄系汚染物質の収支と乾性沈着量を明らかにするとともに、発生源と環境濃度との関連性を定量的に評価した。

 海上を渡る大気汚染長距離輸送機構としては、九州地域におけるフィールド観測データを基に解析を行った。その結果、成層圏オゾンの沈降の詳細なメカニズムを初めて明らかにすることができた。また大陸方面からの汚染物質と天然起源汚染物質の流入、人為起源汚染物質と天然起源物質の相互作用、特に火山起源のSO2の変換プロセス及び雲、雨への取り込み過程を解明した。

(地域環境研究グループ 若松伸司)

国立環境研究所研究報告(R-128-'91)
「Development of an Intelligent Decision Support System for Environmental Modeling and Planning(環境のモデリングと計画のための知的意志決定支援システムの開発)」(平成3年3月発行)

 近年、急速な都市化による広域的な環境変化や地球規模の環境変動が世界的な問題となってきているが、この種の変化は気圏、水圏、地圏、生物圏、社会経済圏等の広範囲な領域にまたがった複雑な現象である。これらの問題を取り扱うためには、観測データや社会・経済データなどの数値データのみならず、専門家の知識と判断といった主観的、定性的情報をも随時取り込みながら広域的な環境の変動を予測していく必要がある。

 本報告書では、専門家が持っている知見をファジィ集合論を用いて数量的に表現し、予測モデル作成の過程で有効に利用する手法について述べている。また、各種領域の専門家の知識を系統的に収集し活用するために、計算機を利用した対話型予測支援システムを開発し、それを大気汚染等の環境問題の解析に適用して、支援システムの有効性を検討した結果が示されている。

(地球環境研究グループ 甲斐沼美紀子)

国立環境研究所研究報告(R-129-'91)
「先端技術における化学環境の解明に関する研究(I)塩化ジベンゾフランとダイオキシン」昭和62年度〜平成元年度(平成3年3月発行)

 この報告には、特別研究前半で取り上げられた化学物質のうち塩化ジベンゾフランとダイオキシンに関する研究成果がまとめられている。内容は2部(12論文)に分かれており、1部は「塩化ジベンゾフランとダイオキシンの化学と環境中の挙動」である。燃焼過程、粘土表面でのこれらの物質の生成機構、霞ケ浦湖水中の多環芳香族化合物濃度の年変動、大気粉じん、母乳、霞ケ浦底質等の環境汚染レベルに関する研究結果がまとめられている。2部は「塩化ジベンゾフランの生体内動態と毒性」に関しての研究結果であり、3種のモノクロロジベンゾフランをラットに投与したときの生体組織中分布、代謝速度、代謝産物の構造決定についての研究、Amesテストを用いての変異原性試験等の報告がなされている。

(地域環境研究グループ 相馬悠子)