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2018年9月28日

都市システム・デザインに関する国際研究

研究をめぐって

 高度な情報基盤の整備と都市への人口集中が進む中で、IoTや人工知能を活用した都市システム・デザインへの期待が高まっています。スマートフォンやIoTセンサーから得られるビッグデータの活用によって、省エネ化・効率化した都市システムを実現する取り組みを推進しています。

世界では

 IoT機器の普及が進む中でどのように都市システムをデザインしていくのか、また、最先端のICTやビッグデータの活用が都市システムに対してどのような影響を及ぼし得るのかについて、高度化する情報基盤の開発と並行して検討されています。

 国連経済社会局が2018年に発表した「World Urbanization Prospects」では、都市に暮らす人の世界人口に対する割合が1950年には30%であったのが、100年後の2050年には68%と全体の3分の2を超えると予測しています。都市人口の増加とともに都市インフラの限界も指摘されており、渋滞の増加などが懸念されています。人口増に対応しながら、災害に対する回復力があり、持続可能で、環境にやさしく、市民の健康と幸福感を増進させる都市システムをデザインするために、IoTや人工知能技術の活用への期待が高まっています。具体的なスマートシティへのIoT応用事例としては、スペインのバルセロナが挙げられます。街中の駐車場にはIoTセンサーが取り付けられ、インターネットを介してその稼働状況がドライバーのもつスマートフォンなどにリアルタイムに提供されていたり、ごみ箱の裏につけたセンサーからごみの量や腐敗度が通知されて効率的な収集経路を選択したりするといったことに活用されています。また、環境、交通、防災といった分野間での円滑なデータ利活用やサービス連携を目的として、「FIWARE(ファイウェア、Future Internet-WARE)」というスマートシティのIoTによる計測情報を一括管理して、GISや各種解析ソフトウェアを統合して都市の各種オペレーションに活用する、オープンソースのIoTプラットフォーム(スマートシティOS)の開発が進んでいます。

日本では

 このFIWAREを活用した国内事例としては、高松市などで観光と防災の分野で開発が始まっています。具体的に、観光分野では、国内外の観光客が利用するレンタサイクルにGPSを取り付け、利用されたルートや立ち寄りスポットを国籍などの属性別に分析し、潜在的な観光スポットの発掘や観光ガイドの配置の効率化に活用されています。また、防災分野では、災害対策として水路や護岸に水位センサーや潮位センサーを設置し、その情報を市役所でリアルタイムにモニタリングすることで、市民への周知手順を効率化し早期対応に活用されています。

 実際、日本ではこうしたIoTプラットフォームの利活用を加速させる高度な情報基盤が世界に先駆けて整備されつつあります。誤差がセンチメートル単位の測位衛星サービスである準天頂衛星システム「みちびき(日本版GPS)」の運用が2018年に始まり、さらに、20秒間に10GBを超える高速通信や1ミリ秒以下の低遅延の通信環境を実現する次世代移動通信システム(5G)の事業化が2020年に始まろうとしています。みちびきによる高精度の位置情報に基づいた情報提供や、5Gによるリアルタイムなエンド・ツー・エンドの相互通信が可能になり、個人に応じた情報フィードバックの利用がより進むことが見込まれています。また、人々の状況をリアルタイムに集めることで効率的な都市システムの構築が期待されています。

 現在世界最大のメガシティである東京都市圏では、こうしたシステムやサービスを活用して、低炭素かつ水害や熱波などの気候変動リスクに対してレジリエントな都市をどのように構築してゆくかについて、世界の目が向けられています。

国立環境研究所では

 国立環境研究所に設置されているGCPつくば国際オフィスでは、「都市と地域における炭素管理(Urban and Regional Carbon Management:URCM)」イニシアティブを国際的に推進しています。この一環として私たちはスマートで持続可能な都市に関する研究に取り組んでいます。

 主な研究活動として、スマートシティ・プロジェクト(例:ICT、IoT、ビッグデータ)が低炭素かつ様々な災害などに対してレジリエントなコミュニティをつくることにどのように貢献し得るかを、環境分野の研究者だけでなく都市デザインを専門とする研究者と共に検討しています。たとえば、スマートウォッチやバイタルセンサーなどのモバイルデバイスから得られたビッグデータを、平常時とともに花火大会やマラソンなど交通が規制される非日常時についても収集・分析し、様々なシナリオ下での移動パターンを理解することを目指しています。この分析により、都市の歩きやすさの改善や、気候変動の緩和と適応に貢献するだけでなく、市民の健康と幸福感を増進させる低炭素な交通システムの普及を目指しています。

 また、都市のCO2排出量をマッピングする研究をFuture EarthやWUDAPTなどの国際組織と連携しながら進めています。この研究では、GPSやモバイルデバイスから得られる位置情報のビッグデータを活動量として利用し、建築物と交通に由来するCO2排出量を推計しています。

 この研究の成果を用いて、環境にやさしく市民の幸福感が増す都市システム・デザインや政策提言を目指しています。いくつかの研究成果は、書籍にまとめられています(図12)。

書籍の写真
図12 都市システム・デザインに関する書籍
書籍では、低炭素であり災害や経済不況などの主要な脅威に対して回復力があるスマートシティの実現に向けて、都市のシステムや経営・管理、土地利用といった研究の理論と実証的知見をまとめています。