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2017年6月30日

化学物質の健康影響評価の変革

コラム3

 2002年にヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関する世界サミットにおいて、2020年までに化学物質の著しい悪影響を最小化するという化学物質規制の目標が設定されました。これを受けて、先進国では、さまざまな対応が進められています。化学物質などの環境外的要因に曝されて健康の悪影響を引き起こす生体の応答経路を「毒性発現機構」といいます。この毒性発現機構、すなわち、毒性発現経路(AOP)を指標にして、毒性を評価し予測する新しい試みが、2007年に米国科学アカデミーより「21世紀の毒性試験」として提唱されました。

 今日では、この新しい毒性試験法は、AOPをベースにしたアプローチに発展しています。このアプローチは化学物質の構造をコンピューターで解析して、類似構造をもつ化合物の探索や分類、特定の遺伝子やタンパク質に特異的に結合するかどうかの探索などのコンピューターの中で行うインシリコ手法による評価(ステップ1)に始まり、各種のインビトロ試験による用量反応解析(ステップ2)や体内での代謝動態の予測、曝露量の推計(ステップ3)の一連の流れを示す概念です。この新しい方式によって健康リスクを迅速に評価し、よりよい予測をすることが期待できます。

図2(クリックで拡大画像を表示)
図2 海外で推奨されている新しい毒性評価の進め方