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グラニュール汚泥床メタン発酵処理技術の開発と実証処理試験

Summary

 低濃度/低・常温の有機性排水を対象としたメタン発酵処理法の開発にあたっては、研究室(ラボレベル)での基礎技術の確立とともに、実証プラントを建設して試験運転によるデータ収集を行ってきました。

ラボにおける技術開発「グラニュール汚泥床メタン発酵法による低濃度産業排水の無加温処理技術の確立」

 ラボスケールリアクターを研究室に設置。嫌気性微生物を高密度に凝集したグラニュール生物膜を用いて排水処理を行う基礎技術(処理プロセス)の開発を行うとともに、嫌気性微生物の特性(群集構造・基質代謝機構)の解明を行ってきました。その結果、常温に対応可能なメタン生成細菌群を生物膜内に保持する方法や、低有機物濃度の条件下においてもメタン生成細菌の活性を維持する運転方法(グラニュール汚泥床法、間欠処理水循環法 等)を確立しました。

 最終的な結果として、低濃度排水(0.3~1.0gCOD/L)の無加温(10~15℃)処理において、従来法の数倍の高速処理(1~4時間)を達成、世界最高レベルの処理能力を実現しています。また後段に無曝気好気処理のリアクターを設置し、十分な水質を得ることも可能となりました。現在は技術の実用化を目指し、実産業排水(製糖排水)を用いた性能評価試験を行っているところです。

図・写真

メタン生成細菌の酢酸資化特性を考慮した運転の最適化

図:酢酸濃度0.1 gCOD/L以下でメタン生成細菌 (Methanosaeta)の活性が大きく低下
図

実証プラント建設による排水処理試験とデータ収集「嫌気性処理と無曝気好気性処理との組み合わせによる生活排水の実証処理試験」

 生活排水(下水)は有機性排水の大半を占め、水洗トイレ由来の固形性有機物が主成分です。また水質や水温の変動も大きいため、その状況に適した技術の開発が必要です。このような背景をもとに、今回開発した嫌気性処理法と省エネルギー型好気性処理法との組み合わせによる実証処理試験を鹿児島県の下水処理場にパイロットプラントを建設して行いました。

 その結果、年間を通して無加温(16~29℃)で良好な処理水質を維持した上で、活性汚泥法に比較して約70%以上の消費エネルギー削減を達成しました。また低温下でも嫌気性処理を安定的に行うための運転条件を見出すことができるなど大きな成果を得ています。

 現在、開発途上国では生活排水による水環境汚染が問題となっていますが、排水処理に要するエネルギー(運転コスト)を十分に確保できない等の理由から、活性汚泥法だけでは対応できない状況にあります。本研究成果を開発途上国での排水処理にも反映させ、水環境を含めた地球環境の保全に役立てていきたいものです。

図・写真

実証プラントにおける生活排水の処理水質とエネルギー消費量の比較表

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