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干潟の生態系
- その機能評価と類型化

環境儀 NO.15

野原精一
生態系機能の評価法確立が干潟の保全・再生の第一歩です。

 干潟は魚や貝,海草などの生物を育くむ「海のゆりかご」と呼ばれるほど豊かな場所であり,私たちは古(いにしえ)よりこれらを収穫する場として利用してきました。渡り鳥にとっても休息・採餌になくてはならない場所となっています。

 そのような干潟も高度経済成長期以降急速に進められた埋立てにより全国各地で激減し,東京湾ではそのほとんどが消失してしまいました。しかし近年,干潟に注がれる目は変わってきました。ラムサール条約などの国際的取組みは残されている干潟の保全を促しています。さらに最近では消失した干潟の再生も試みられています。

 日本における干潟保全の研究は,生態的特徴を調査し,貴重な種が生息しているかどうかなど,その干潟の重要性を示すことに力点が置かれてきました。しかし,環境アセスメント制度が法制化され,生態系影響評価の項目が加わったことから,開発による影響を数量的に評価することが求められています。つまり「干潟の有用性」の評価に,より客観的な視点,定量的な指標が必要になってきています。

 国立環境研究所では干潟生態系の定量的な評価を目的に,平成10~14年度にかけて特別研究「干潟等湿地生態系の管理に関する国際共同研究」を行いました。この研究では全国の代表的な干潟を調査・評価するとともに,これを基に干潟版の生態系機能評価モデルの開発に取り組みました。